2002 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍抑制遺伝子Tsc2に変異を持つモデル動物を用いたTuberinの機能解析
Project/Area Number |
14580804
|
Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
小林 敏之 財団法人癌研究会, 癌研究所・実験病理部, 研究員 (40260070)
|
Keywords | Tsc2遺伝子 / tuberin / トランスジェニックEkerラット / ノックアウトマウス / 腎腫瘍 / 結節性硬化症 / S6キナーゼ / Erc / mesothelin |
Research Abstract |
本研究では、トランスジェニックEkerラットの実験系において腫瘍抑制活性を示したtuberinのカルボキシ(C)末端領域に結合する蛋白の検索を試みた。tuberinのRap1-GAP相同領域を含むC末端側約400アミノ酸残基をbaitとし、酵母two-hybrid法によりmyomegalinとγ2-adaptinを同定した。培養細胞における強制発現系により、これらの蛋白とtuberinの全長同士が結合することを確認した。現在、これらのtuberin結合蛋白の特異抗体の作製を試みており、内在性の蛋白の結合を確認し、意義を明らかにする予定である。一方、Tsc2ノックアウトマウスより樹立したtuberin欠失腎腫瘍細胞(MKOC1-277)にtuberinを発現させた細胞株(T2株)の樹立を行った。空ベクターのみを導入した細胞株(E株)に比して、T2株においてはP70 S6キナーゼ(S6K)の活性が抑制されていることが明らかとなった。MKOC1-277はヌードマウスへの皮下移植で造腫瘍性を示すが、E株ではそれが保持されているものの、T2株では完全に抑制されることがわかった。またMKOC1-277の造腫瘍性はmTOR-S6K経路の抑制剤であるラパマイシン投与により、完全に抑制されることもわかった。これらの結果から、tuberinの機能の一つにはmTOR-S6K経路の抑制があり、その機能欠失が腫瘍増生に関わっていることが示唆された。さらに本研究では、Tsc2欠失細胞で強発現するErc/mesothelin遺伝子がT2株では抑制されること、ラパマイシンではErcの抑制は認められないことがわかった。このことから、tuberinはS6Kとは異なる経路において機能を発揮することが予想された。今後この新たな経路を同定すると共に、複数の経路とtuberinのC末端領域が示す活性の関連を明らかにしたい。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Kobayashi, T.et al.: "Toward chemotherapy for Tsc2-mutant renal tumor"Proc.Jpn.Acad.. 79,Ser.B. 22-25 (2003)
-
[Publications] Hino, O., et al.: "Renal carcinogenesis : Genotype, phenotype and dramatype"Cancer Sci.. 94. 142-147 (2003)
-
[Publications] Momose, S.et al.: "Identification of the coding sequences responsible for Tsc2-mediated tumor suppression using a transgenic rat system"Hum.Mol.Genet.. 11. 2997-3006 (2002)
-
[Publications] Satake, N., et al.: "N-Ethyl-N-hydroxyethyinitrosamine(EHEN)-induced renal and hepatocarcinogenesis in the tumor suppressor Tsc2 transgenic rat"Cancer Lett.. 184. 157-163 (2002)