2003 Fiscal Year Annual Research Report
組織工学的手法による未分化細胞から血管への選択的誘導とフェノタイプの安定発現
Project/Area Number |
14580810
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大川 敬子 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (30251052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 浩稔 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (70292547)
大島 宣雄 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (50015971)
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Keywords | 再生医工学 / 人工血管 / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / 骨髄細胞 / ナノフィルム / 傷害修復 |
Research Abstract |
近年では、閉塞し機能を失った血管の代替に、新たに血管新生を促すことを目的として、血管前駆細胞による細胞治療が試みられ、成果をあげつつある。また最新の組織工学(再生医工学、tissue engineering)研究の成果から、血管に働く流れや張力など力学的要素が血管壁を構成する細胞群の機能発現・分化誘導を促す重要な因子の一つであることが指摘されている。そこで本研究では、生体内の力学的環境を模倣した柔らかい基質上での培養を試み、血管壁を構成する細胞のフェノタイプを維持する上での利点を検索した。培養基材としては、対照群として用いる通常のポリスチレン・ペトリディッシュの他、シリコーンゴムを用いて、基材の柔らかさを変化させて使用した。 シリコーンゴムの一種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)は生体軟組織相当のヤング率をもち顕微鏡観察に適した高い透明性を持つ培養基材のため、基礎医学研究に有用であるが、その未処理表面への細胞接着性は非常に低い。そこで、親水/疎水ポリマーを重層させたナノフィルムをPDMS上に形成し、マウス大動脈から採取した初代培養血管内皮細胞および初代培養中膜由来平滑筋細胞、およびマウス骨髄細胞を播種したところ、典型的な生体由来細胞外基質であるコラーゲンをコートした場合とほぼ同等の細胞接着性を付与できた。また、これらの細胞形態と生存率の変化を検索したところ、血管平滑筋細胞においては基材の柔らかさが細胞接着率・生存率・運動性を高め、この傾向は血管内皮細胞よりも顕著であることがわかった。さらに、内皮細胞や平滑筋細胞の剥離をともなう血管傷害を模擬した実験系を再現性よく作ることができた。これらの結果については、論文投稿中である。
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