2003 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素による化学発光を利用した植物の生理状態測定法の開発
Project/Area Number |
14593004
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡部 弘高 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (90221142)
|
Keywords | 植物 / 環境ストレス / 活性酸素 / 生化学発光 / 生理状態 / 乾燥 / 浸透圧 / 植食 |
Research Abstract |
本研究では、様々な刺激による生理状態の変化をリアルタイムで検知できる技術開発のために生体の変化を極早い段階で検出する手段として生体が発生する光に注目した。これは、ホタルや夜光虫などの発光生物のような特殊な発光機構によらない、我々の肉眼の感度の10万分の1以下の極弱い光で、その発光起源は活性酸素を初めとするラジカルの発生と反応に因ると考えられている。この光はバイオフォトンと呼ばれ、その多くはミトコンドリアでの呼吸作用に伴って電子伝達系から漏れ出た電子が励起する活性酸素に因る化学発光である。一方、細菌感染や強い環境ストレスが加わった場合にも、そのストレスの強さに依存してバイオフォトンが放射される。これは過敏感性応答とよばれ、その機構についてまだ解明できていないが、これまでの申請者らの研究によってその放射特性から植物が環境変化や薬物によって受けたダメージの強さを定量的に計測できることが分かってきた。そこで、植物の生長や外部刺激による生理状態の変化とバイオフォトンの発光特性との関連を解明し、植物の生理状態のリアルタイムな検出法を確立することを目的として研究を進めてきた。 今年度は、浸透圧および植食ストレスに注目して研究を進めた。前年度の乾燥ストレスは、ストレス強度を定量化が難しかったのでポリエチレングリコールによる浸透圧ストレスによる発光特性を調べた。その結果、ストレス印可時の発光強度が強いほど、ストレス緩和後の植物の生長が悪いという結果が得られた。特に、細胞分裂が盛んな分裂帯の発光強度と生長の阻害は個体差に関わらず強い相関を示し、特定部位の測定が有効であることが示唆された。また、植物の害虫であるハダニによる植食ストレスについてもバイオフォトンの出力特性を調べた。ハダニの食害による応答には害虫に消化不良を起こさせるタンパク質を生成する直接防衛と、天敵を呼び寄せる匂いを出す間接防衛があることが知られており、これらの防衛応答はハダニの口針から注入されるエリシターによって引き起こされることが知られている。バイオフォトンでは、エリシターによって誘起されたと考えられる発光が観測され、防衛応答をリアルタイムで検出することが出来た。このように、ストレスや傷害の早期検出にバイオフォトンが有効であり、その結果の分析手法について多くの知見を得ることができた。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] T.Ohya, N.Oikawa, R.Kawabata, H.Okabe, S.kai: "Biophoton Emission Induced by Osmotic Stress in Adzuki Bean Root"Jpn.J.Appl.Phys.. Vol.42 Part1 No.12. 7625-7628 (2003)
-
[Publications] R.Kawabata, T.Miike, M.Uefune, H.Okabe, M.Takagi, S.Kai: "Biophoton Emission from Kidney Bean Leaf in infested with Tetranychus kanzawai Kishida"Jpn.J.Appl.Phys.. (in print). (2004)