2003 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体ゲノムの全構造とRNA編集機構に基づく陸上植物のルーツの探索
Project/Area Number |
14596003
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Research Institution | Faculty of Science, Shizuoka University |
Principal Investigator |
吉永 光一 静岡大学, 理学部, 教授 (70021954)
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Keywords | RNAの編集 / 陸上植物の初期進化 / ツノゴケ / 葉緑体ゲノム / ゼニゴケ / エディティング |
Research Abstract |
コケ植物の中のどのグループが最初の陸上植物か,未だ陸上植物の系統に残された最大の謎とされている。この謎を解くために,最初の陸上植物の候補とされているツノゴケの葉緑体ゲノムの構造と機能を分析した。葉緑体ゲノムのタンパク質遺伝子に基づく系統樹は,コケが単系統として上陸したことを示した。 ツノゴケの葉緑体ゲノム構造を分析する過程で,いくつかの遺伝子に異常な構造がみつかった。これらの遺伝子には翻訳することのできないナンセンスコドンが含まれていた。そこで,cDNAの構造を分析することにより,mRNAの構造を分析した。その結果,ツノゴケの葉緑体のRNAは非常に多くの部位で編集を受けていることがわかった。葉緑体ゲノムからのすべての転写物を調べたところ,942箇所でRNA編集を受けていることがわかった。これだけ多くの編集部位はこれまでには報告されていない。ツノゴケ葉緑体におけるRNA編集の研究は以下の新しい発見をもたらした。(1)葉緑体遺伝子の半数以上はナンセンスコドンを含むが,これらすべてのナンセンスコドンはUからCのRNA編集を受けセンスコドンとなる。(2)RNA編集を受ける95%以上のコドンは他の植物のものと同じになることにより,機能あるタンパク質がつくられる。(3)tRNA-Lysのアンチコドンは編集を受けて正常なコドンとなる。アンチコドンのRNA編集は植物では例がない。(4)翻訳領域以外のRNA編集として,SD配列での編集をみつけた。(5)タイプ2イントロンにおいて,イントロン切り出しに必須な配列がRNA編集によりつくられた。(6)編集部位をもつRNA上に部位を指定する可能性のある配列をみつけ,この配列をDistant cis-recognition sequence(DCRS)と名づけた。
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[Publications] 吉永光一(共著): "RNA editing in hornwort chloroplasts makes more than half the genes functional"Nucleic Acids Research. 31・9. 2417-2423 (2003)
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[Publications] 吉永光一(共著): "Evolution of early land plants : insight from chloroplast genomic sequences and RNA editing"Endosymbiosis and eukaryotic organelles. (印刷中).