Research Abstract |
本年度は,ボランタリー連邦のマネジメント解明のために,(1)先行研究の検討,および(2)パイロット・スタディが行われた。まず,(1)に関しては,文献サーベイや専門家との議論を通じ,以下の点を明らかにした。 ボランタリー連邦とのかかわりにおいて,会員は2種類の誘因を受け取る。協働それ自体から得られるインハウス誘因と,協働から自律的な活動の場に持ち帰るテイクアウト誘因である。合理性の規範の下では,ボランタリー連邦はテイクアウト誘因を提供する。テイクアウト誘因の提供は,能率-会員の満足に関係する。一方で,ボランタリー連邦は有効性-組織目標の基準を満たさなければならない。一般に,ボランタリー連邦の組織目標は,会員が属するフィールド(あるいは業界,ポピュレーション)の振興を志向している。この目標達成のための対極的な戦略が,業界構造観によって示唆される「定位」と,資源ベース観によって示唆される「学習」である。支配的戦略が異なれば,テイクアウトの様式,組織構造,リーダーシップ・スタイルもまた異なるであろう。また,有効な戦略は環境状況に依存するであろう。 (2)については,道東地域にあるいくつかの協会,連盟の会長や理事長に対する聴取調査を行った。この聴取調査から,ボランタリー連邦の支配連合のキャリア,時間視野,対外的ネットワーク,本務の経営状態といった,本研究が内包すべき新たな変数が析出された。また,「定位」と「学習」のいずれにも属さない戦略の存在が示された。この戦略は,既存の文献では「関係的」と形容されるものに類似していた。さらに,支配連合は会員の手により選出されるため,マネジメントの前提となるガバナンスの問題を視野に入れる必要性が確認された。
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