Research Abstract |
本研究は,ボランタリー連邦組織のマネジメントを解明するための先行図式として,「自律協働システム」の概念を提示した。自律協働システムは,2つの副領域から構成される。すなわち,組織の会員が本務を遂行するところの自律領域と,協調行為が行われるところの協働領域である。このように考えることで,組織が会員を協働に惹きつけるための2種類の誘因が識別される。(1)協働それ自体から得られる会員の満足としての「インハウス誘因」,(2)協働領域から自律領域へとフィードバックされる「持ち帰り誘因」である。モデル分析は,(2)の持ち帰り誘因こそが重要であるという結論を導き出した。 本年度は,以下4つの点を解明・考察した (1)側生組織,ルースリー・カップルド・システム,「場」といった類似概念との比較を通じて,自律協働システムの概念が精緻化された。 (2)被験者をボランタリー連邦の会員に見立てて,上記2種類の誘因が会員の協働意欲に及ぼす影響が検証された。検証結果は,(1)一般に,会員は持ち帰り誘因に惹かれる,(2)ただし,本務が忙しくない「有閑型」会員は,そうでない「繁忙型」会員と比べて,インハウス誘因に惹かれる傾向がある,(3)有閑型会員と繁忙型会員の間で,協働意欲の強さに大きな差はない,の3点を示した。 (3)ボランタリー連邦の存続のためには,会員から協働を引き出すだけでなく,支払能力を維持していかなければならない。そのための戦略,組織構造,リーダーシップといった問題を概念的に考察した。 (4)ボランタリー連邦は,基本的には会員が自主的に運営する「アソシエーション」である。しかし現実には,その中で,事務局職員による職務遂行の仕組みである「官僚制」が発達している。わが国社団法人の標本をもとに,アソシエーションの中で官僚制が発達する原因の解明を試みた。その結果,(1)規模,(2)年齢,(3)行政委託型法人,(4)事業の数,の4つが職員数を規定していた。さらに,多数の職員を抱える社団法人では,媒介型ではなく集約型のテクノロジーが採用されていることも明らかになった。
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