2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14651010
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
瀧 一郎 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (80242072)
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Keywords | フランス美学 / フランス唯心論 / 物活論 / クーザン / ジュフロワ / ベルクソン / 西周 / ヘヴン |
Research Abstract |
平成14年度には・クーザンの高弟ジュフロワ(Theodore Jouffroy,1796-1842)の思想を解明するにあたって、フランスおよび日本における後代への影響という観点から細かい文献学的調査をした。 1.フランス唯心論への影響については、ベルクソン講義の未公刊の手書きノート(パリのジャック・ドゥーセ文学図書館所蔵、整理番号BGN 3146)を判読し、<物質論講義>と<心身論講義>の冒頭に置かれたテクスト("Hylozoisme et Atomisme"「物活論と原子論」)を校訂した。いまだ充分にジュフロワの影響について検証できる段階ではないが、現時点では、ベルクソンが<物活論-力動論>と<原子論-機械論>とを調停させることによって持続の一元論に到達したこと、また、そこへ至るまでの思想形成期にジュフロワを生気論の代表者と見ていることが確認されたので、物活論と生気論との関係を、力動論-機械論、観念論-実在論、唯心論-唯物論という大きな二項関係のなかで捉え直してゆくことが今後の課題である。 2.日本への影響については、西周が明治八、九年に翻訳出版したヘヴンの『心理学』(原著Joseph Haven, Mental Philosophy,1869)を、美学関係の章を中心にして原典に照らして調べた。この書物は19世紀半ばに勢力をもっていたフランス唯心論の立場から書かれた啓蒙書であるが、そのなかで「猶佛魯哇(ジュフロワ)を措きて、他に学習すへき著述なし」と言われるほど、ジュフロワの思想が高く評価されている。しかし、ジュフロワは唯心論に分類されているのに、クーザンは表現説の方に分類されている点は、思想史上注目に値する。明治前期にこのように紹介されたフランス唯心論美学がその後、ドイツ観念論美学に駆逐される歴史的経緯については今後の研究課題である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 瀧 一郎: "ベルクソン講義録-物活論と原子論(テクストと翻訳)"大阪教育大学・美術教育講座・芸術講座紀要『美術科研究』. 20. (2003)
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[Publications] Taki Ichiro: "Une Esthefique de l'infuition -Bergson et la spirifurlite Japonaise"大阪教育大学・美術教育講座・芸術講座紀要『美術科研究』. 19. 19-28 (2002)
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[Publications] 瀧 一郎: "ベルクソン美学研究-「直観」の概念に即して-"東京大学大学院人文社会系研究科博士論文ライブラリー コンテンツワークス株式会社Book Park サービス係. V+228 (2002)