2002 Fiscal Year Annual Research Report
非営利機関であるわが国の開設者別医療機関に関する行動モデルの構築
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14653002
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
知野 哲朗 岡山大学, 経済学部, 教授 (40171938)
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Keywords | 医療経済学 / 所有権の経済理論 / 非営利機関 / 医療機関 / 老人病院 / 高齢者入院医療費 / 医療サービス市場 / 医療制度 |
Research Abstract |
14年度の研究内容について実証的側面と理論的側面とに区分して説明する。まず資料データを中心にした実証的側面からの暫定的結果は次のようになる。わが国の医療提供システムでは、異なる開設主体の医療機関が併存しながら医療サービスの提供を行っているが、これらの開設者別医療機関の市場構造的特徴および経営的成果は明らかに相違する。とくに医療法人と個人立の病院(私的病院と呼ぶ)は他の開設者病院(公的病院やその他の私的病院)に比べて著しい相違がクロスセクションの観点のみならず、時系列的観点においてもデータ上から確認された。私的病院は他の開設者病院に比べ病床数がきわめて少なく、一般病床と精神病床を中心とした病院(一般病院と精神病院)に特化する。一般病院においてはおもに老人病院、そして最近では療養型病床をもつ病院に特化する。かつ、これらの特化した領域では私的病院の経営的収支は高い黒字を示す。このような私的病院の特化と経営的成果は開設主体の選択行動の結果であると考えられる。その理由は、政府は開設者別の役割分担を促すような所有権に沿った政策が実施されるのではなく、医療機関一般に対して各種の政策や規制(診療報酬規制、人員配置基準、構造設備基準など)が実施されているからである。また本研究ではこのような私的病院の行動上の特徴がわが国の高齢者入院医療費の地域的格差を促していることを解明している。次に、理論的側面では所有権(property right)の経済的アプローチによる価格規制の経済分析(Barzel, Cheungらの研究)を参照し、わが国の診療報酬規制がもたらす経済的影響を分析した。つまり、診療報酬規制によりレントの発生する余地が生まれ、それが医療機関の特化現象を促す機能を果たしていること、そしてこれが上述した日本の医療サービス市場で観察されたファクトファインデングを理論的にも説明する。
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Research Products
(2 results)