2002 Fiscal Year Annual Research Report
同位体化学的アプローチによる二重ベータ崩壊半減期決定:地球化学と核物理の融合
Project/Area Number |
14654098
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
日高 洋 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10208770)
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Keywords | 二重ベータ崩壊 / 同位体測定 / Re-Os年代 |
Research Abstract |
モリブデン鉱床試料(モリブデナイト)のRe-Os年代測定およびRu同位体測定をおこなうことを目的とし,初年度である今年度はそれらの測定方法の確立を目指した。予備実験を行った結果,Os, Ruを地球化学的試料から効率良く化学分離する手法として,強酸雰囲気下での蒸留法が妥当であることがわかった。取り扱う試料の重量は1〜10mgであるため,用いる酸試薬等も少量にすることを考えたマイクロ蒸留器具を設計し,標準試薬を用いて蒸留効率の確認を行ったところ,Os, Ruともに90%以上の回収率が得られた。さらに蒸留成分に対して陰イオン交換を併用することにより,同位体干渉のないOs, Ru成分の精製が行えることが期待される。現在,本方法の地球化学試料への応用を検討している段階である。 上記の化学操作法の確立と並行して,Re-Os年代測定のためのOs同位体測定およびRu同位体測定法の基礎検討のために京都大学附属地球熱学研究施設に設置してある表面電離型質量分析計を用いて標準試薬Os, Ruの同位体比測定を行った。その結果,数十-数百pg量のOs, Ruにおいても0.1%以下の測定精度で同位体比測定が行えることを確認した。現状では1pg以下の試料量でも検出は可能であることを確認した。測定時の分析装置内におけるイオン化効率を高める方法についてさらに検討している。 以上の結果を踏まえ,標準岩石試料JP,一般のかんらん石試料,モリブデナイト試料について化学処理を手がけている段階である。Mt.Mulgine鉱床産モリブデナイト(形成年代約28億年),Osbourne鉱床産モリブデナイト(形成年代約16億年)を用いた予備実験をおこなった結果,(1)Re-Os年代は問題なく測定可能であり,28.1士0.1億年,16.2士0.2億年の形成年代を示す,(2)モリブデナイト試料中のRu含有量は1ppb以下と極めて低い,ことが確認できた。したがって蒸留法とイオン交換法の併用によりRuをMoから完壁に化学分離することが要求される。
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[Publications] J.R.DeLaeter: "An overview of the atomic weights during the twentieth century"Pure and Applied Chemistry. (In press). (2003)
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[Publications] 日高 洋: "同位体比を用いた分析:同位体比の定義と標準"ぶんせき. 1. 2-8 (2002)
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[Publications] 日高 洋: "同位体比を用いた分析:重元素の同位体比(年代測定を中心として)"ぶんせき. 6. 290-295 (2002)