2003 Fiscal Year Annual Research Report
同位体化学的アプローチによる二重ベータ崩壊半減期決定:地球化学と核物理の融合
Project/Area Number |
14654098
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
日高 洋 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10208770)
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Keywords | ルテニウム / モリブデン / 二重ベータ崩壊 / 同位体 / 質量分析 |
Research Abstract |
昨年度までの段階で地球化学的試料を前処理した後,Ruを化学的に分離し,その同位体比測定を行う分析手法を確立した。 本年度は,上記手法の応用として,Mt.Mulgine(西オーストラリア),Osbourne(クィーンズランド)産の二種類のモリブデン鉱物について,(1)Re-Os壊変系を用いて各試料の形成年代を正確に求める,(2)試料中のRu含有量を正確に求める,(3)モリブデン鉱物から化学分離したRuの同位体比分析を行う,ことを試みた。Mt.Mulgineからは(2.902±0.004)x10^9年,Osbourneからは(1.051±0.001)x10^9年のRe-Os年代が得られた。さらに,両モリブデン試料中のRu含有量を安定同位体希釈法により求めたところ,Mt.Mulgineは91ppt,Osbourneは28pptとかなり低い値を示した。Mt.Mulgine試料のRu同位体においては,標準値に対して90%の^<100>Ruの過剰分が検出された。Osbourne試料においては元来,含まれているRu量が少ないために^<100>Ru同位体のみが強調されており,他同位体は検出限界以下であった。両試料のRu同位体組成に見られる^<100>Ru同位体過剰は明らかに^<100>Moからの壊変によるものと断定できた。以上のデータをもとに各々の試料について^<100>Moの半減期を見積もると,Mt.Mulgineより(1.7±0.5)x10^<18>年,Osbourneより(1.5±0.5)x10^<18>年が導かれ,両者のデータは誤差範囲内でよい一致を示した。これまで,^<100>Moの半減期についてはカウンティング法により求められていたが,この値は6.7x10^<18>〜1.16x10^<19>の間で大きくばらつくなど,その絶対値に関しては未だ議論の余地があるため,本研究によってもたらされた結果は意義のあるものである。
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