2002 Fiscal Year Annual Research Report
擬分子性ペロブスカイト構造をもつ導電性ヨウ化スズ層状物質の開拓
Project/Area Number |
14654128
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲辺 保 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20168412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 俊雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20227713)
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Keywords | 層状ペロブスカイト化合物 / 結晶構造 / 電気伝導度 / 有機・無機複合化合物 / 有機カチオン |
Research Abstract |
平成14年度はSn-I系のペロブスカイト層が1枚の層状ペロブスカイトについて、有機カチオンの違いによる、構造・導電性の関連を調べた。単純な直鎖アンモニウムを用いた場合、カチオンの種類によって導電性が変化することを見いだしたが、アルキル鎖の構造変化に起因する相転移がしばしば観測され、広い温度範囲の物性研究に不都合があった。そこで、カチオン間やカチオン-ペロブスカイト間に引力的な相互作用を導入する目的で、末端にカルボキシ基をもつ有機アンモニウムを用いた結晶作成を行った。その結果、目的通りカチオン間に水素結合が形成され、低温まで相転移が起こらない結晶が得られた。また、カチオン骨格の違いによって導電性が変化することから、これがペロブスカイト骨格のどのような変化に関連しているかを、これまで得られた十種以上の結晶の結果とともに調べた。SnI_6八面体が頂点共有で連結したペロブスカイト層の構造に着目すると、低抵抗型(室温伝導度が10^<-1>Scm^<-1>程度で温度上昇によって伝導度が減少する)の結晶は、Sn-I結合距離が相対的に短く、またSn-I-Sn結合角が直線により近い時に現れることが定性的に分かった。一方、得られた構造データを用いてバンド構造の計算を行ったが、導電性の違いに拘わらず、どの結晶も大きな(>1eV)エネルギーギャップを持つことが分かった。伝導度から見積もられる活性化エネルギーはこの値より遥かに小さく、結果として不純物準位の存在が示唆された。熱電能測定から、電荷担体がホールであることが分かり、低抵抗型の結晶の構造の特徴がホール伝導を担う価電子帯のバンド幅と結びつくことが明らかになった。不純物準位の起源についてはまだ不明であるが、この点を明らかにすると電荷担体密度を制御し、高伝導性へと変換するドーピングの道も開けると考えている。
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Research Products
(1 results)