2002 Fiscal Year Annual Research Report
自己増殖する人工二分子膜の創出による「生命の起源」問題へのアプローチ
Project/Area Number |
14654141
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40192447)
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Keywords | 酸化的縮合反応 / ハメットプロット / チオールエステル / 置換基効果 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の目的である、生命の究極的なモデルとなるような自己増殖する機能を有する脂質二分子膜系を構築するために必要となる縮合反応の探索を行なった。様々な反応を試みた結果、ベンズアルデヒド誘導体をオクタンチオールと塩基の存在下、チアゾリウム塩を触媒としてアゾベンゼンと反応させると、アゾベンゼンが酸化剤として作用し、酸化的縮合反応が進行してチオールエステルが生成することを見出した。この反応は、生体内において営まれているチアミンピロリン酸を触媒としてピルビン酸からアセチル-CoAが生成する反応と類似した反応であり、二分子膜を反応場として行なうことのできる縮合反応として有望である。この反応の機構を理解する目的で、反応の初期におけるベンズアルデヒド誘導体の減少速度をNMRを用いて測定したところ、反応次数はベンズアルデヒドに対して一次であることが判明した。さらに、基質の減少速度定数に対するベンズアルデヒドの置換基効果を検討したところ、Hammettプロットが直線から大きくずれることを見出した。また、基質の減少速度定数に対するアゾベンゼンの置換基効果を調べたところ、p-ブロモベンズアルデヒドを用いた場合には、ほとんど置換基効果が観測されなかったのに対して、p-シアノ誘導体を用いた場合には正の反応定数をもつ大きな置換基効果が見られた。これらの結果から、反応基質として用いるベンズアルデヒドの電子受容性によって、チオールエステル生成反応の律速段階が、触媒のアルデヒドへの求核的反応の過程からアゾベンゼンによる酸化反応の過程へと移動することが結論された。この結果は、二分子膜を反応場として行なうことができるような効率のよい酸化的縮合反応系を構築するために、有用な情報となる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Tadashi Mizushima: "Mechanistic Studies of Direct and Sensitized Photolysis of Methyl (4-Nitrophenyl) diazoacetate in the Presence of an Electron-donating Amine"Journal of Chemical Society, Perkin Transaction 2. No.7. 1274-1282 (2002)
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[Publications] Shingo Ikeda: "Photolysis of N-Phenylglycines Sensitized by Polycyclic Aromatic Hydrocarbones"Journal of Photochemistry and Photobiology A. Vol.149. 121-130 (2002)
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[Publications] Hiroshi Inui: "Mechanism of Photochemical Rearrangement of 2H-Azirines in Low-temperature Matrices"Chemical Physics Letters. Vol.359. 267-272 (2002)