2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14654163
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 敏行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10012519)
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Keywords | 異型葉 / エチレン / アブシジン酸 / 分化の可塑性 / 環境応答 / 水没耐性 |
Research Abstract |
アカバナ科Ludwigia arcuataは、水没により葉身が細くなるという異型葉性を示すことは、予備実験において確認されていたが、この誘導に関わる内因性の因子としてエチレンを確定することが出来た。一方、巾の広い陸上型の形成には別の植物ホルモンアブシジン酸(ABA)が関わっていることが示された。両者は、互いに拮抗的に作用するが、詳しい解析の結果わかったことは、葉身の幅の狭広は基本的にABAのレベルの高低で決まることであった。それでは、いかにして水没型が形成するかであるが、エチレンはABA濃度を低下させるという観測データを考慮すると、まず、水没によりエチレンが組織内にたまり、その結果ABAの濃度を低下させ、水没型を形成するというものであった。なお、これらの変化は細胞の伸長ではなく、細胞分裂であることが本実験系で見られた特徴であった。 ところで、先端の葉位の若い葉では、ここで述べた変化が起こるが、基部の古い葉ではこのような応答は最早見られない。ところが、両者の中間領域では、葉身の縦横比が、先端より基部へ向けてある勾配を持って変化するという興味ある変化が観察された。しかも個別の葉を精査したところ、環境変化に可変なのは基部のみであることであった。葉の形態形成の初期から追跡すると、水中型、陸上型の変化は比較的早い段階で方向付けられるが、ある時期までは変かに対して可変であり、いわば分化の可塑性を保持しているが、ある段階で決定が起こり、それ以降は不可変であるという段階を踏んで、変わっていることが明らかとなった。これは、これまで余り知られていない分化の可塑性の研究に好適な系であることを示している。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Sano, T., Nagata, T.: "The possible involvement of a phosphate-induced transcriptional factor encoded by phi-2 gene from tobacco in ABA-signaling pathway"Plant Cell Physiol.. 43. 12-20 (2002)
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[Publications] Kuwabara, A., Nagata, T.: "Views on developmental plasticity of plants through heterophylly"Recent Res.Devel.Plant Physiol.. 3. 45-59 (2002)
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[Publications] Imai, S. et al.: "An onion enzyme that makes the eyes water"Nature. 419. 685 (2002)
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[Publications] Kumagai, F. et al.: "γ-Tubulin distribution during cortical microtubule reorganization at the M/G1 interface in tobacco BY-2 cells"Eur.J.Cell Biol.. 81. 1-9 (2002)
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[Publications] Nagata, T., Ebizuka, Y.: "Medicinal and Aromatic Plants. 12. In : Biotechnology in Agriculture and Forestry (Nagata, T. and Bajaj, Y.P.S. eds.)51巻"Springer-Verlag. 348 (2002)
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[Publications] Nagata, T., Tabata, S.: "Brassica and Legumes : From Genome Structure to Breeding. In : Biotechnology in Agriculture and Forestry (Nagata, T. et al. eds.)52巻"Springer-Verlag (in press). (2003)
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[Publications] 長田敏行編: "植物工学の基礎"東京化学同人. 208 (2002)