2002 Fiscal Year Annual Research Report
維管束形態変異を用いた、葉組織細胞への無機イオン分配機構の解析
Project/Area Number |
14654165
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
三村 徹郎 奈良女子大学, 理学部, 教授 (20174120)
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Keywords | 細胞膜 / 液胞膜 / 維管束 / シロイヌナズナ / リン / カリウム / 窒素 / 無機イオン代謝 |
Research Abstract |
高等植物においては、細胞が存在する組織、特に細胞外環境としての細胞壁アポプラストにおいて、栄養塩がどのように各細胞に供給されているかを理解することが、植物個体のイオン代謝の解析に重要である。本研究では、維管束の形態形成機構解析のために、近年多数分離されているシロイヌナズナの変異体を用いて、維管束系による無機イオン分配機構の生理的解析を行う。維管束系ネットワークのみが異常で、その他の形態が正常な個体を用い、根から吸収された各種無機イオンが、維管束を通して、各植物組織の細胞にどのように分配されていくかを、正常植物と維管束系ネットワークの変異体を比較しながら検討する。無機イオン分配における、維管束系と個々の細胞膜輸送系の役割を明らかにしていくことで、維管束系が葉組織内においてイオンを分配するのに必須の機構が何かを明らかにする。 本年度は、まずシロイヌナズナ野生個体を用いて、培養初期の葉組織のイオン状態と各種イオン欠乏下における生育形態の検討を行った。栄養条件として、窒素欠乏、リン欠乏、カリウム欠乏の培地を作成し、それぞれの培地上での生育を観察したところ、窒素欠乏、リン欠乏では、従来多くの高等植物で知られていた、栄養塩欠乏でみられる種々の生理反応、すなわち根・葉の生育形態の変化、クロロフィル含量の低下、窒素・リンの老化葉から若年葉への転流などの現象を確認することができた。また、個体レベルでイオン分布を測定したところ、それぞれの欠乏塩の減少が確認された。一方、カリウム欠乏のつもりで作成した培地では、そのような生理現象を確認することができず、これについては、現在理由を検討中である。また、維管束突然変異体を用いた解析を進めるために、変異体種子を東京大学の福田博士から提供していただき、現在、その種子のヘテロ変異体を作成し、実験用の種子の蓄積と確認を行っている。
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[Publications] Belimov A.: "Response of spring rape (Brassica napus var. oleifera L.) to inoculation with plant growth promoting rhizobacteria containing 1-aminocyclopropane-1-carboxylate deaminase depends on nutrient status of the plant"Canadian Journal of Microbiology. 48. 189-199 (2002)
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[Publications] Mimura T.: "Induction of the Na^+/Pi co-transport system in the plasma membrane of Chara corallina requires external Na^+ and low levels of Pi"Plant Cell & Environment. 25. 1475-1481 (2002)
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[Publications] Mimura T.: "Rapid increase of vacuolar volume in response to salt stress"Planta. 16. 397-402 (2003)
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[Publications] Yamashita K.: "Evidence for nucleotide-dependent passive H+-transport protein in the plasma membrane ofbarley roots"Plant & Cell Physiology. 44. 55-61 (2003)