2002 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール空間における個々の分子の光励起電子移動過程
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14655020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 卓也 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (50229556)
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Keywords | 分子内分極 / 走査トンネル顕微鏡 / 実効トンネル障壁測定 / 完全共益ポルフィリ |
Research Abstract |
光励起電子移動は光合成、光触媒反応、光・電子デバイスの素過程として重要である。電子移動の様子をナノスケールの実空間で追跡することを目標に、手法開発を行っている。本年度は、走査トンネル顕微鏡を用いた実効トンネル障壁測定を行い、単一分子内の電荷分布を直接画像化を行った。 探針に一定電圧をかけて、探針-試料間距離sを変えながらトンネル電流Iを測定したとき、その傾きからトンネル障壁φを求めることができる。探針-試料間距離に変調を加えて、トンネル電流の変位をロックインアンプで測れば、局所的な実効トンネル障壁高さの面内分布を画像化することができる。 この方法を用いて完全共役ポルフィリン6量体の単一分子計測を行った。この分子は、非常に大きな平面的π共役系をもつ特異なもので、ごく最近、京都大学理学研究科化学専攻において、大須賀グループにより合成されたものである。この分子をSTMで槻察したところ、分子の外形にほぼ対応した平面的な分子像が観測された。さらに、電荷分布を調べるため、実効トンネル障壁像も同時に測定すると、分子中央部の共役ポルフィリン環の部分だけが、著しく暗くなっており、強い電荷移動が起こっていることを示している。さらに周辺のオクチル基の部分は、中心部の電荷によって分極し、周辺より明るくなっていることがわかった。 本研究では、分子内分極の画像化にはじめて成功し、電荷移動過程をプローブ顕微鏡で追跡することが、充分可能であることを示した。
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[Publications] 高木昭彦, 古川雅士, 田中裕行, 松本卓也, 川合知二: "有機分子/金属界面における電子状態のアライメント"表面科学. 23. 616-121 (2002)
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[Publications] 松本卓也: "化学フロンティア6「分子ナノテクノロジー」SPMによるナノ物質の電気伝導度測定"化学同人. 53-64 (2002)