2002 Fiscal Year Annual Research Report
光電効果を利用した新しい電子線源の高輝度化に関する研究
Project/Area Number |
14655127
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
木本 高義 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料研究所, 主任研究員 (00343864)
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Keywords | ホトカソード型電子線源 / 電子線輝度 / 光電効果 / 量子効率 / レーザー / 被覆方法 / Cs_3Sb / ペルチェ冷却 |
Research Abstract |
極めて輝度の高い電子線源は透過型電子顕微鏡(TEM)の高分解能化等を促す。光電効果を利用した「ホトカソード型電子線源」は、レーザー照射部のみから初速の小さな電子が放出されるため、他の電子線源よりもクロスオーバー位置で電子線を細く絞り易く、Cs_3Sb等のバイアルカリに代表される量子効率(光電効果による電子放出率)の高い物質を被覆した陰極先端からは極めて多量の電子が放出されるため、超高輝度の電子線源となることが期待できる。本研究ではその実用化に向けた研究を行っている。 量子効率の高いCs_3Sb等の物質では、わずかな酸素に晒すと量子効率が急激に低下するため、陰極先端部に高量子効率物質を被覆した後、陰極ユニットを超高純度アルゴンガス雰囲気中に閉じこめて、酸素に晒さずに電子線源に装着する方法及びそれを実現する装置を開発してきた。また、高真空中であっても、高量子効率物質の温度が高くなるほど、その量子効率は低下しやすいため、陰極ユニット周辺を冷却するとともに、ペルチェ冷却を利用して陰極先端部を局所冷却する方法及びそれに基づく特殊な陰極の開発にも成功し、レーザー照射しても陰極先端部が十分に局所冷却されていることを実験的に確認した。本年度は、さらに、この方法と特殊陰極を用いて、陰極先端部を局所冷却しながら、レーザー照射した場合、多量の電子がより長時間安定に放出されることを実証した。また、電子線の輝度を精密に測定するため、クロスオーバー位置での電子線束の微小径を測定するための装置の手作りを開始した。さらに、輝度の向上の目的だけでなく、電子線の干渉性をも向上させるため、陰極先端部にCs_3Sb等の高量子効率物質を蒸発する際に小さな穴の開いたマスクを施すための器具を手作りで作製した。これにより、極微小領域からの電子の放出が可能となった。(以上、約760字)
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