Research Abstract |
本研究は,きたるべき高齢化社会を勘案し,個人の価値観,移動能力,嗜好に応じて,移動者に違和感なく受け入れが可能な,しかも社会的にも望ましい交通行動選択を誘導するシステムを開発することを目指す.研究初年度である平成14年度においては,次の3テーマに取り組み,持続的社会発展のために必要な交通システムの要件整理を行うとともに,個人行動の詳細なメカニズムの解明を行った. 1)持続型社会の発展を実現するための交通システムに求められる要件について,既存の文献をレビューすることによって整理することを試みた. 2)各公共交通機関の特性について,自然環境への影響,社会環境への影響,コスト,信頼性,利便性・安全性などの側面から整理し,その相違を明らかにした.なお従来型の交通機関(鉄道,路線バス,自動車交通等)のみではなく,新交通システムや,デマンドバス,カーシェアリングシステムなど,近年普及しつつある新たな交通機関も整理の対象とした. 3)交通状況に関するデータと,個人の行動履歴をもとに,個人の交通行動モデルの構築を試みた.具体的には,個人の移動制約,トリップ特性および行動履歴,さらには交通状況データをもとに,出発時刻,交通機関選択,経路選択等のモデル化を行った.特に,説明要因として,所要時間やサービスレベルの信頼性に着目し,リスク受容型やリスク回避型の交通行動の相違に対応したモデル化を試みた.そのために,過去の行動履歴と現在交通状況データを結合して,交通手段別,経路別の所要時間分布を更新し,期待到着時刻と遅延リスク確率を求め,それに応じて行動をモデル化した.上記の分析を実施するために,屋内交通行動実験システムを開発するとともに,ダイアリー調査を実施し,複数日の交通行動に関する実証データを収集した.
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