Research Abstract |
脳波による感性解析は,α波のパワー,α波ゆらぎ,相互相関関数法などいくつかの報告があるが,まだ確立されているとはいえない.そこで,屋外実験に先立ち,実験室において感性と脳波との関係について検討を重ねている. 8名の被験者に対し,8チャンネルのテレメータ(日本光電社製WEB-5000)を用いて脳波計測を行った.脳波導出は,国際10-20法にしたがい,F3,F4,C3,C4,P3,P4,O1,O2に計測電極,両耳朶に基準電極を貼付する基準電極導出法によった.被験者の感性(快,不快など)に影響を及ぼすと考えられる刺激として,リラクゼーション音楽,クラシック音楽,ロック,ポップス,交通騒音,赤ん坊の泣き声などの17パターンの聴覚刺激を用いた.これらの聴覚刺激を行っている間の閉眠1分間の脳波データを分析対象とした.それぞれのパターンにおける脳波計測の終了時には音刺激に対するアンケート調査も行った. 脳波データの分析には,周波数分析と相互相関分析を用いた.周波数分析の後,0.1-4,4-7,7-10,10-13,13-21,21-30Hzの6つの帯域ごとにパワーを求めた.この分析は1分間全体のデータおよび10秒ごとに区分したデータに対して行った.また,8チャンネルのすべての組み合わせに対して,相互相関分折を行った.その結果,左後頭部(O1)で計測した脳波の,7-10Hzのα波低周波帯域,13-30Hzのβ波帯域において聴覚刺激間の差が見られた.音楽に対して,交差点での交通騒音,赤ん坊の泣き声など,「うるさい」印象の強い刺激に対して脳波のパワーが高まる傾向があった.音楽間にも差が見られたが一定の傾向は認められていない.今後,実験プロトコルを再検討し,他の分析方法を用いることで,感性の抽出精度を高め,屋外空間での脳波に適用していく必要がある.
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