Research Abstract |
本研究では,高齢者が交通空間で感じるストレス,快適性を脳波計測と感性解析により客観的,定量的に評価することが目的であった. 被験者は,高齢者と若年者のそれぞれ8名であった.脳波計測には8チャンネルテレメータ(日本光電社製 WEB-5000)を用いた.電極貼付部位は国際10-20法に準拠した,F3,C3,P3,O1,F4,C4,P4,O2とし,基準電極導出した.また,各電極から導出した電位の差分をとることで双極導出と等価な電位も計算により求めた.基準電極導出,双極導出の脳波は,δ波(0.1〜4Hz),θ波(4〜7Hz),α波(7〜10,10〜13Hz),β波(13〜21,21〜30Hz)の六つの帯域ごとに分析した.分析には,周波数分析とチャンネル間の相互相関分析を行った.まず個人差を判定するために,室内において,開眼,閉眼時の脳波を計測した.次に,環境の異なる場所を選択し,椅子に座った状態で脳波を計測した.また同時に騒音,気温,湿度の計測,景観のビデオ撮影を行った.さらに,歩行,車いす歩行,三輪自転車走行時の脳波計測を行った.すべて,閉眼1分,開眼1分の計測であった.いずれの場合も,脳波に顕著な差は見られなかった.O1(左後頭部)の脳波のα波(7〜10Hz),β波(13〜21,21〜30Hz)に環境の影響が見られる傾向にあり,それは,音圧レベルの違いの影響によると考えられたが,明確にすることはできなかった.また,F3-C3,P3-O1,F4-C4,P4-O2,F3-F4,C3-C4,O1-O2間に比較的高い相互相関関係が見られたが,感性の指標とするには至らなかった.今後,計測チャンネルを増やすことや,同時に唾液中ホルモンなどの生化学的計測を併用することで,感性解析の新たな指標が見つかる可能性がある.
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