Research Abstract |
エネルギーリサイクルを基軸とする流域系循環社会の設計のためには,第一に,その基軸となるエネルギーリサイクル可能な資源の賦存量・地域的分布を把握する必要がある.そこで本研究では,主たるエネルギーリサイクル対象であるバイオマス資源と可燃性廃棄物とに注目し,エネルギー利用を考えた場合の賦存量の推定を行った.バイオマス資源は,農業・水産・食品・下水由来など極めて多様であるが,既往の推定からも,その主たるものは国土の67%を占める森林・林業由来の資源であるといえる.しかし,その主たるバイオマスの供給元である林業は最盛期の1/3にまで縮小しており,これまでの推定は実際的にエネルギー利用の最大化を考えた場合の賦存量を示してはいなかった.そこで本研究では,過去最大の素材生産量のあった1967年の生産量を元に,材分を除いた林業残渣の賦存量を火力発電寄与率6.4%(送電端効率40%を仮定),廃棄木材を入れた森林由来全体の賦存量を16.9%と推定した.また,これら廃棄木材も多く含まれる可燃性廃棄物についての既往の賦存量推定は,現在の廃棄物性状(高含水率・高塩分)を基準としたものであった.しかし,より効率的なエネルギーリサイクルの実施には,その弊害となる厨芥分(高含水率・高塩分),塩化ビニール(高塩分)を分離することが賢明であり,その熱効率の向上効果(10%→35%)は,火力発電寄与率を2.4%から7.5%へと向上させることがわかった. 以上より,国内におけるエネルギーリサイクル可能な資源の現実的賦存量と,そのおおよその地域的分布は把握できたと言える.次に,表題の設計の実施のために必要となるのが,バイオマス・廃棄物のエネルギー利用技術の把握である.エネルギーリサイクル,特に森林バイオマスのエネルギー利用の実施において最も大きな弊害となっているのが,そのコストの高さからくる経済的競争力の低さである.これに対して最も高い経済性を付与することのできるエネルギー利用技術が,既存の高効率発電所でのバイオマス混焼技術であるが,その発電所の偏在性の高さから,輸送可能距離を考慮した技術適用可能地域のスクリーニングが必要である.そこで本研究では,既設の1MW以上の発電所を対象として各都道府県の混焼技術毎の導入可能性を推定した.その結果,北海道・南東北・北陸・中国・北九州地方においては混焼技術の適用可能性が極めて高く,逆にそれ以外の地城についてはガス化技術などのバイオマス単体での高効率利用技術の適用が不可欠であることが示唆された.
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