Research Abstract |
マメ科緑肥作物を有機物資源として利用する低投入型の作物生産では,資源の枯渇が懸念されているリン酸の回収能力について明確にしておく必要がある.土壌中に蓄積されたリン酸の根粒菌による溶解が作物生産にどの程度の貢献があるかについては不明であり,本研究では,土壌肥沃度やリン酸吸収係数の異なる土壌ならびに難溶性リン酸施用条件下において,それぞれの作物のリン酸吸収を調査するとともに,接種根粒菌による難溶性リン酸の溶解程度を評価することを目的とした.平成14年度における研究実績の概要は下記の通りである.Sesbania cannabina, S. rostrata, Crotalaria juncea, Cajanus cajan, Arachis hypogaea, Glycine maxを異なるリン施用条件下で栽培した際の生育を調査した.リン源として,(1)難溶性リン酸(Ca3(Po4)2,AlPo4,FePo4・4H2OをそれぞれPとして等量ずつ混合)と(2)易溶性リン酸(過リン酸石灰)を用い,1/5000aワグナーポットあたり1.2gP((1)のみ),2.4gP((1)のみ),3.2gP((1)2.4gP+(2)0.8gP),4.0gP((1)2.4gP+(2)1.6gP),8.0gP((1)2.4gP+(2)5.6gP)を施用する区を設けて,それぞれP1区,P2区,P3区,P4区,P5区とした.いずれの植物種においても,地上部リン含有量はP5区で最も多く,P1区で最も少なかった.S. cannnabinaとS. rostrataは,難溶性リン酸単独施用区(P1区,P2区)においても他種と比べて高い乾物重とリン含有量を示した.G. maxとC. junceaにおける易溶性リン酸混合施用区(P3区〜P5区)における地上部リン含有量は,難溶性リン酸単独施用区(P1区,P2区)に比べて著しく高い値を示した.一方,C. cajanとA. hypogaeaでは,P1区とP2区において乾物重ならびにリン含有量が著しく少なく,本実験条件下では難溶性リン酸の吸収機能は確認できなかった.
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