Research Abstract |
本申請研究では,北海道南部におけるミズダコ亜成体の日周行動を,飼育実験とブイ型テレメトリーシステムを用いてGIS解析を行い,最も適した成長と行動が可能な水温環境などを明らかにすることを目的とした。飼育実験と野外実験は,2002-2003年の2年間,北大フィールド科学センター臼尻水産実験所内の各種飼育水槽および臼尻沿岸で行った。 異なる水温条件(2,5,7℃)下で,1グループ4-5個体(1-5kg)の亜成体を同時飼育して,行動と縄張りなどを観察した。各個体の行動は,体全体を丸めた休息姿勢から,腕と傘膜を広げて相手をその中に包み込む行動など,16通りの行動パターンに区分できた。また,水温が高いほど個体間の攻撃などの接触回数が増加した。特に,より大型個体ほど,高い水温で縄張り行動が増加した。これらのことから,適水温範囲内での水温の上昇は各個体の餌の探索範囲や縄張り行動などを活発化させると推定した。 2003年の4月から6月の間,臼尻水産実験所近くの沿岸域に,3つのラジオ・ブイ(Vemco社)を正三角形状(一辺:300m)に配置し,ロガーを装着した8個体のミズダコ亜成体(体重3-4kg)の日周行動を追跡した。行動解析は,3つの受信ブイから送信される発信を実験棟屋上のアンテナで受信し,室内のPC上で各個体の行動解析を行った。その結果,標識個体は,個体当たりで平均約250m^2のホームレンジ(索餌などで移動可能な範囲)で活動し,この行動範囲で過ごす時間の42%は狭い特定の範囲(core area,平均46m^2)にとどまり,この範囲は個体間で明瞭に離れていた。このことから,core areaが厳密な意味での縄張りと推定した。また,潜水観察した標識3個体は,観察範囲内の底刺し網に羅網した魚を摂餌するという特異な行動を示した。この行動は,非標識個体でも観察されており,ミズダコが漁具に羅網する魚介類を餌として利用する可能性が高いことが,今回の研究で初めて明らかとなった。
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