2003 Fiscal Year Annual Research Report
特定の温度域での膜変性を考慮した青果物の鮮度保持法に関する基礎研究
Project/Area Number |
14656092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 義則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80234053)
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Keywords | 細胞膜機能 / プロトン緩和時間 / キュウリ / 低温障害 / リンゴ / ヒートトリートメント / 呼吸速度 |
Research Abstract |
貯蔵中の膜機能の変化をとらえるために、H14年度は低温障害を呈する青果物の一つであるキュウリを用いて、貯蔵実験を行った。その結果、15℃の対照区と比較して2℃の低温区において、pHの顕著な増加、イオン漏出速度の上昇及びプロトン緩和時間T_1の増加が認められ、低温障害による膜の透過性の変化が明らかになった。一方、低温感受性果だけでなく、一般に高温条件に曝すことによる膜機能の変化と鮮度保持への効果を検討するために、H15年度はリンゴ果実を対象にヒートトリートメントの効果的な温度と処理時間について検討した。リンゴ果実が速やかに劣化する20℃で貯蔵した結果、42℃-2時間処理を施したリンゴ果実の呼吸速度は、対照区の果実よりも低減され、プロトン緩和時間T_1も処理区において短い値が観測された。ここで観察されたT_1は、果実組織の水の平均のT_1を示すもので細胞内外の水を区別するものではない。このような平均のT_1は、低温障害果と同様に、通常の鮮度低下過程においても時間と共に長くなることが示されている。これに対して、本実験のようにT_1が短い値に維持されたことは、通常予測される膜の水透過性の増大が、ヒートトリートメントにより抑制されたものと推察される。一方、果肉の糖度、酸度、果実硬度などの品質評価項目には明確な違いが認められなかった。したがって、T_1は膜機能の変化を品質評価項目に先立って検知できる可能性が示され、最適な処理温度を更に詳細に検討するための指標になると考えられる。
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