2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の分化調節機構の解明:脳神経回路の再生・修復を誘導するバイオ技術の開発
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14656135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久恒 辰博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究所, 助教授 (10238298)
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Keywords | 神経幹細胞 / 脳回路 / 脳再生 |
Research Abstract |
成熟した中枢神経系は、多数のニューロンおよびグリア細胞によって構成されているが、これらの細胞の大半が脳発生期に神経幹細胞から分化することによって生じたものである。従来、神経幹細胞の分化に関する研究は、in vitroの培養実験を用いた分化誘導因子の探求によって広く行われて来た。この方法により、グリア細胞への分化に関与する多くの液性因子が同定され、神経幹細胞からアストロサイトやオリゴデンドロサイトといったグリア細胞への詳細な分化機構が解明されている。しかしながら、ニューロンへの分化に関しては、決定的な因子の発見には至らず、現在も神経幹細胞からニューロンへの分化機構の解明が、神経科学分野における最も中心的かつ重要な課題となっている。ニューロンは、神経幹細胞の自己複製が停止した後、分裂周期から神経幹細胞が離脱することによって分化誘導されることが明らかとなっている。このことから、本研究では、神経幹細胞の増殖とニューロンへの分化の間には極めて密接な関係があると考えた。すなわち、神経幹細胞に対する増殖シグナルが喪失した場合に、神経幹細胞はニューロンへと分化するのではないかと考えた。 本研究では、中枢神経幹細胞に特異的に発現する中間径フィラメントであるnestinのプロモーター下にGFPを組み込んだpNestin-GFPトランスジェニックマウスを用いることで、直接的に胎児脳より神経幹細胞を調製することが可能となった。そこで、神経幹細胞の膜表面に存在する細胞接着因子についての解析を行った。フローサイトメトリーにより、定量的な発現解析を行った結果、神経幹細胞においては、インテグリン分子群の中でもα_5β_1が非常に強く発現しており、この分子のはたらきにより細胞の増殖性が維持されていることが示唆された。さらに、ニューロンへの分化に伴って、その発現が低下し、細胞周期からの逸脱が誘導されるとともに、ニューロン様の形態へと細胞が変化することが観察された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yoshida N, Hishiyama S, Yamaguchi M, Hashiguchi M, Miyamoto Y, Kaminogawa S, Hisatsune T: "Decrease in expression of alpha5beta1 integrin during neuronal differentiation of cortical progenitor cells"Experimental Cell Research. (In press). (2003)
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[Publications] Okada H, Miyakawa N, Mori H, Mishina M, Miyamoto Y, Hisatsune T: "NMDA receptors in cortical development are essential for the generation of coordinated increases in [Ca^<2+>]_i in neuronal domains"Cerebral Cortex. (In press). (2003)
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[Publications] Koketsu D, Mikami A, Miyamoto Y, Hisatsune T: "Non-renewal of neurons in the cerebral neocortex of adult Macaque monkeys"The Journal of Neuroscience. 23. 937-942 (2003)
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[Publications] Miyakawa N, Uchino S, Yamashita T, Okada H, Nakamura T, Kaminogawa S, Miyamoto S, Hisatsune T: "A glycine receptor antagonist, strychnine, blocked NMDA receptor activation in the neonatal mouse neocertex"Neuroreport. 13. 1667-1673 (2002)
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[Publications] Kaji T, Kaieda I, Hisatsune T, Kaminogawa S: "SIN-1 induced p53-dependent apoptosis of murine primary neural cells : a critical role for p21^<ras>-MAPK-P19^<ARF> pathway"Nitric Oxide. 6. 125-134 (2002)
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[Publications] Mohri M, Reinach PS, Kanayama A, Shimizu M, Moskovitz J, Hisatsune T, Miyamoto Y: "Suppression of the TNFalpha-induced increase in IL-1alpha expression by hypochlorite in human corneal epithelial cells"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43. 3190-3195 (2002)
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[Publications] Shioda R, Reinach PS, Hisatsune T, Miyamoto Y: "Osmosensitive taurine transporter expression and activity in human corneal epithelial cells"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43. 2916-2922 (2002)