2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14656137
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原 敏夫 九州大学, 農学研究院, 助教授 (50117222)
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Keywords | 糖タンパク質 / 無細胞タンパク質合成系 / 昆虫細胞抽出液 / 糖鎖付加 / 翻訳反応 / 翻訳後修飾 / 細胞内移行シグナル / セルフリー |
Research Abstract |
細胞におけるタンパク質へのN型糖鎖の付加は小胞体、ゴルジ体、小胞輸送、膜との融合等の細胞内諸器官を経由し、多様性に富む様々な種類の糖転移酵素による酵素反応の集積プロセスとして行われている。このような小胞輸送経路に翻訳産物が移行するには細胞内移行シグナルが重要な役割を果たしている。本技術シーズではin vivo系と同様にin vitro系においても分泌シグナルが機能し、試験管内であるにもかかわらず小胞輸送経路が再構築されているものと考えられる。このプロセスを移行する過程で糖鎖のトリミングを受け、糖タンパク質が合成されている。 窒素ガスを利用した加圧型細胞破砕装置で調製した昆虫細胞抽出液を用いて合成した翻訳産物VP1には糖鎖が付加されたgVP1であった。PNGaseF処理の結果、gVP1はメディアルゴルジで修飾される糖鎖と同様な糖鎖が付加されていること、プロテアーゼ抵抗性を示したことから翻訳産物gVP1はオルガネラ内腔に存在し、そのオルガネラはゴルジ体内に存在することが明らかになった。したがって、本研究開発事業の技術シーズである昆虫細胞抽出液の中には糖鎖付加を司るオルガネラが安定に存在し、細胞内移行シグナルに依存した小胞輸送により糖鎖修飾が行われることが明らかになった。さらに、合成された翻訳産物は小胞輸送経路を経てゴルジ体へ移行していることが示唆された。 一方、部分精製を行ったgVP1タンパク質のレクチンとの結合性の検討結果から、付加された糖鎖を構成する糖としてマンノース及びフコースが確実に存在することが明らかになった。しかし、糖鎖を構成する糖とレクチンとの親和力の強弱がレクチン結合性の判定に大きく影響を与える。現在、モデル系としてSf21細胞で発現した糖鎖が付加したVP1をLC-MSによる糖鎖構造の解析に着手している。得られたin vivoレベルでの糖鎖構造をベースに、in vitro系で合成されたVP1に付加された糖鎖構造を早急に決定したい。
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