2003 Fiscal Year Annual Research Report
新しい抗ストレス因子フラノン系物質の高次ホメオスタシス機能に及ぼす影響
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14657019
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
粟生 修司 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (40150908)
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Keywords | フラノン系物質 / オープンフィールド試験 / 高架十字迷路試験 / 情動 / 長期増強 |
Research Abstract |
1)内因性フラノン物質である2(5H)フラノンはモリス水迷路学習を改善することが知られているが、サルの視覚的カテゴリー弁別課題に及ぼす影響を調べた。正答率には影響がなかったが、レバー押し潜時が有意に短縮し、弁別課題遂行促進作用が示唆された。 2)ラット海馬スライス標本を用い、長期増強に及ぼす影響を調べた。30μMの2(5H)フラノンの30分曝露で、シャーファー側枝のシータバースト刺激で誘発される海馬CA1の長期増強促進作用を認めた。 3)カルメル臭を示す食品由来フラノン物質であるジメチル3(2H)フラノンの各種行動評価試験に及ぼす影響を雄性ウィスターラットで調べた。ジメチル3(2H)フラノンは3%の濃度でtrimetylcitrateに溶かし、少なくとも1時間曝露して、行動評価試験を施行した。オープンフィールド試験では、ラットの移動速度を促進し、活動促進作用を示した。高架十字迷路試験では中央部への進出および開放アームへの顔出し行動が有意に増加し、不安情動の軽減作用が示唆された。強制水泳試験ではstruggling行動およびimmobilityに変化はなく、うつ反応に影響しなかった。受動的回避学習試験では、暗室移行潜時が増加したが統計的有意差はなかった。 フラノン系物質は内因性代謝物質として2(5H)フラノン(別名2-buten-4-olide)が同定され、36時間以上の絶食時に増加する摂食抑制物質で血糖、アドレナリン、ノルアドレナリン、グルココルチコイド上昇作用を示すが、本研究により、学習記憶促進作用を示すことが行動およびニューロンレベルで示唆された。また、フラノン系物質は植物や食品の香り物質としても同定されているが、本研究により活動性や情動行動に影響を及ぼしている可能性があり、その生理作用をさらに検討する必要がある。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] Aou S et al.: "Orexin-A (Hypocretin-1) impairs Morris water maze performance and CA1-schaffer collateral long-term potentiation in rats"Neurosci. 119. 1221-1228 (2003)
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[Publications] Kawai K et al.: "Aggressive behavior and serum testosterone concentration during the maturation process of male mice : the effects of fetal exposure to bisphenol A"Environ Health Perspect. 111. 175-178 (2003)
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[Publications] Kubo K et al.: "Low Dose Effects of Bisphenol A on Sexual Differentiation of the Brain and Behavior in Rats"Neurosci Res.. 45. 345-356 (2003)
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[Publications] Birt D et al.: "Intracellularly recorded responses of neurons of the motor cortex of awake cats to presentations of Pavlovian conditioned and unconditioned stimuli"Brain Res.. 969. 205-216 (2003)
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[Publications] 粟生修司 et al.: "トリブチルスズとビスフェノールAの脳と行動の性分化への影響"脳の科学. 25. 1141-1147 (2003)
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[Publications] Omura M et al.: "Distribution of Tributyltin, Dibutyltin and Monobutyltin in the Liver, Brain, Fat and Neonate of Rats - Evaluation in Two-Generation Toxicity Study of Tributyltin Chloride"Environ Sci.. (In press).
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[Publications] Omura Y et al.: "Physiological Significance of 2-Buten-4-Olide (2-B4O), an Endogenous Satiety Substance Increased in the Fasted State"Exp Biol Med (Maywood). 228. 1146-1155 (2003)
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[Publications] 粟生 修司: "内分泌攪乱物質と自律神経機能"Clinical Neuroscience. 21・12. 1390-1392 (2003)
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[Publications] 粟生修司: "摂食行動を司る神経回路網"日本臨牀. 61. 17-21 (2003)
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[Publications] 粟生修司: "摂食中枢および満腹中枢の局在,入出力信号と機能連関"日本臨牀. 61. 22-26 (2003)
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[Publications] 粟生修司: "状況に応じて選択的に作動する摂食抑制経路"日本臨牀. 61. 36-40 (2003)
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[Publications] 粟生 修司 et al.: "脳機能と栄養"幸書房. 381 (2004)
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[Publications] 粟生修司: "内分泌疾患のとらえかた-眼でみるベットサイドの病態生理"文光堂. 291 (2004)
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[Publications] 粟生修司 et al.: "アロマサイエンスシリーズ21[7]香りの機能性と効用"フレグランスジャーナル社. 305 (2003)