2002 Fiscal Year Annual Research Report
注意欠陥多動性障害(AD/HD)の感受性要因―環境要因型動物モデルの開発
Project/Area Number |
14657084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 知保 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70220902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉永 淳 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究所, 助教授 (70222396)
今井 秀樹 独立行政法人国立環境研究所, 内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク管理と評価プロジェクトグループ, 主任研究員 (00232596)
吉田 稔 聖マリアンヌ医科大学, 医学部, 助教授 (80081660)
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Keywords | 注意欠陥多動性障害 / 動物モデル / セレン欠乏 / メタロチオネイン / ノックアウトマウス / オープンフィールド試験 / 受動回避試験 / 水銀 |
Research Abstract |
本年度は主として2つのモデルについて検討を行った,(1)C57BL-セレン欠乏モデルとして,離乳期より低セレン食で飼育したC57BL系マウスについて,飼育開始後4および16週の時点でオープンフィールド試験,5週の時点で受動回避試験を行った.本試験系については,既に飼育8週の時点ではオープンフィールドにおける活動性が亢進することを認めている.4週経過時でのオープンフィールドでは,欠乏群において活動亢進の傾向を認めたものの,統計的有意差には至らなかった.また,16週経過時では欠乏群と充足群(対照群)との間に差を認めなかった.受動回避試験については,5週経過時点で全く差を認めなかった.以上より,セレン欠乏による多動の出現する時期には,time-windowが存在することが示唆された. (2)メタロチオネイン欠損(MTKO)-水銀モデルとして,メタロチオネインI, IIをともに欠損したマウスと野生型マウスとを用い,長期にわたる水銀蒸気への曝露を行い,曝露3および5ヶ月の時点において,オープンフィールドにおける活動性ならびに受動回避試験における回避成績を調べた.その結果,オープンフィールド行動に関しては,水銀曝露による活動亢進がいずれの試験時点でも認められたが,MT欠損自体は影響を及ぼさなかった.ただし5ヶ月時において,MT欠損に水銀曝露が複合した場合にのみ,移動速度が上がることが示唆された.一方で,受動回避については,MT欠損群が,水銀曝露の有無にかかわらず成績が悪く,記憶学習の障害が示唆された.5ヶ月時において回避試験を繰り返したところ,3ヶ月時の記憶が保持されていたことが確認され,この記憶の保持はMT欠損の水銀曝露群において劣っていた. 以上より,MT欠損と水銀曝露とは行動学的に異なる影響を及ぼし,両者が長期に渡って複合すると多動と記憶障害を示すことが明らかになった.
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