2003 Fiscal Year Annual Research Report
病院医療における患者代弁者の役割機能に関する国際比較
Project/Area Number |
14657092
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上原 鳴夫 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80144286)
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Keywords | 患者代弁者 / リスクマネジメント / 患者教育 |
Research Abstract |
職業としてのPatient Advocacyの生成と推移について文献レビューを行い、米国マサチューセッツ総合病院のOffice of Patient Advocacy(OPA)を中心に活動と機能の実際を調査した。病院の職業的PAはRepresentative, Ambassadorなど異なる名称で呼ばれる。1960年代にSocial Workerとして同種の役割が配置され、1970年代から全国の病院にPatient Representativeが配置された。90年代には不採算部門として縮小される傾向にあったが、医療安全の意識の高まりに伴い再び見直されつつある。患者と病院組織との間のギャップを埋め、倫理面、業務の遂行およびケアの標準を改善することを目的として、(1)患者の相談や苦情を随時に受止め、(2)応急的な対応を可能にするとともに、(3)関係部署やプログラムにフィードバックしてシステム改革を促進する役割を果たしている。主な関心事は病院のリスクマネジメントだが、業務のやり方やシステムの改善、問題患者の対策、患者の権利に関するスタッフと患者への教育を促進しており、医師評価にも反映している。年間約2500件の苦情に対応。電話によるものが75%で、近年は職員の通知が増えた。外来患者55%、入院患者32%で、診療関連が26%、業務関連が36%、対人関係が29%、支払い関連が9%を占める。診療関連では、治療が72%、、情報提供要請が22%、医療安全3%。業務関連では、対応遅れが63%、患者所有物関係が13%、入退院や転院に関するものが10%だった。資格制度はない。修士以上が望ましいとされ、養成コースでは(1)医療政策と組織管理、(2)病気とケアの理解、(3)関連法規、(4)倫理と代弁機能、(5)医療の経済的側面、を学ぶ。<結論>医療への信頼が揺らいでいる今こそ、患者の権利擁護と患者-スタッフ間のトラブル回避、および医療安全の観点からも、日本の病院でも同様の機能を備えた専門職員を配置することが有益かつ必要と考える。
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