Research Abstract |
「健康日本21の健康戦略」の政策も3カ年の経過に伴い,市町村レベルでの実施が本格化されてきた。健康戦略の健康指標のひとつとして推奨されている「市町村ごとの健康余命試算」に関する研究報告も第62回日本公衆衛生学会では,前年の1題(本報)から5題に,また関連研究を含めると10題以上となり,ニードの高まりが生じていることが窺われる。そこでの本報関連の研究発表は群馬県の平成12年確定人口をベースにした,70市町村別の0,20,40,65,75(女は80プラス)歳の各年齢別平均余命と,平成8〜12年の死亡数と平成12年度介護保険者数・要介護支援認定者数を使用して65,75(女は80プラス)歳の健康余命の試算値を計算方法やデータ入手方法を含めて報告した。70市町村の0歳平均余命(平均寿命)試算値の統計量は,男77.42±1.62年(Mean±SD),女83.68±1.23年であった。これは対応年の厚生労働省による平成12年完全生命表(第19回生命表)の平均寿命値の男77.72年,女84.60年と比べると,女のみ群馬県が有意に低値であった(母平均の検定)。同様に20歳の男58.24±1.23年,女64.15±1.08年も,40歳の男39.10±1.05年,女44.58±1.00年も,65歳男17.47±O.54年,女21.52±0.66年も,対応年の第19回生命表の20歳平均余命の男58.33年,女65.08年,40歳平均余命の男39.13年,女45.52年,および65歳平均余命の男17.54年,女22.42年と比べるといずれの年齢も群馬県の女のみが有意に低値であった。 健康余命は65歳男15.88±0.57年,女18.36±0.66年,75歳男8.91±0.59年,女10.24±0.61年,さらに女80歳が6.64±0.61年と,男と女の健康余命は女が男に比べて長命方向へ5年程度ズレがあるような所見を得た。また,健康余命の市町村のちらばり範囲Rangeは,65歳男13.75〜16.95年,女16.71〜20.08年,75歳男6.29〜10.17年,女8.35〜11.66年,さらに女80歳が4.76〜7.68年と平均余命同様(両端は町村部)の傾向のあることが認められた。 一方,算出過程における検討で,人口規模に関する影響の関与を検討しておくことが必要と思われたので,特に介護保険認定者1人の健康余命に及ぼす影響をシミュレーションする方法で検討することにした。その結果,1人の影響が市部では1日未満,町部では10日,村部では20日程度に拡大するとの知見を得たといえる。今後の課題としては,各市町村が自己評価の必要性から,県内の他市町村と余命計算値で比較する場合,人口補正をすることがどうしても必要になるので,その簡便な方法についてさらに検討しなければならないと考えている。
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