2003 Fiscal Year Annual Research Report
個体における遺伝子操作を用いた肝芽腫の発症機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
14657182
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 富 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40125638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 潤 東北大学, 病院・講師 (50282067)
野田 哲生 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10183550)
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Keywords | コンディショナル・ジーンターゲティング法 / 肝芽腫 / 胎仔肝Creマウス / Wntシグナル / 肝臓特異的活性型変異β-カテニン発現マウス / 肝臓特異的APC欠損マウス / β-カテニンの蓄積 / 肝細胞の過形成 |
Research Abstract |
我々はコンディショナル・ジーンターゲティング法を用いた肝芽腫の病態モデルマウスの樹立を最終的な目標としている。本「研究課題」ではその前段階として「胎仔肝特異的にCre酵素を発現するトランスジェニックマウス」(以下、胎仔肝Creマウス)の作製を目指したが、Yakarらが報告したalbumin-creマウス(Proc Natl Acad Sci USA;96:7324-7329)が「胎仔肝Creマウス」として利用できる可能性があることが判明した。 ヒト肝芽腫においてβ-カテニン遺伝子の活性型変異が51%に、Axin遺伝子の変異が7.4%にみとめられ、肝芽腫の発生にはWntシグナルの異常な活性化が関与していることが強く示唆されている。このことより、本研究ではalbumin-creマウスを用いたコンディショナル・ジーンターゲティング法によりWntシグナルの活性化が肝細胞にもたらす変化及び、肝細胞におけるWntシグナルの制御機構の解析を直接的に行った。 具体的には肝臓特異的活性型変異β-カテニン発現マウス及び肝臓特異的APC欠損マウスを作製した。これらのマウスはいずれも、寿命の短縮(4-7週)、肝細胞核へのβ-カテニンの蓄積、肝細胞の過形成、がみとめられたものの腫瘍形成には至らなかった。 以上の結果より、β-カテニンの蓄積によるWntシグナルの活性化は肝細胞の過形成や、重篤な肝機能障害を引き起こすこと、肝腫瘍形成にはWntシグナルの活性化以外の要因が更に必要であること、また、APCはマウス肝臓においても、ヒト大腸上皮の場合と同様に、β-カテニンの分解を促進し、Wntシグナルを負に制御していることが明かとなった。
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