2002 Fiscal Year Annual Research Report
浮遊増殖性ヒト卵巣癌細胞株における足場非依存性増殖能の獲得メカニズム
Project/Area Number |
14657417
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
河原 和美 福井医科大学, 医学部附属病院, 助手 (60234100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 好雄 福井医科大学, 医学部附属病院, 講師 (60220688)
小辻 文和 福井医科大学, 医学部, 教授 (50153573)
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Keywords | 卵巣癌 / 癌転移 / 足場非依存性増殖能 / anoikis / ERK / Bcl-2 |
Research Abstract |
癌転移克服において、足場非依存性増殖能の獲得機序解明は重要な課題である。これをより臨床に近い状態で検討するため浮遊増殖性卵巣癌細胞株を自然樹立し、その特性を検討した。【方法】本細胞株が何故浮いたまま増殖できるのか、次の仮説をたて検証した。1.接着依右性の増殖シグナルが浮遊時にも活性化され続けている。2.anoikis (=detachment induced apoptosis) が抑制されている。3.接着依存性シグナルの消失を凌駕する恒常的な増殖シグナル活性化機構が存在する。各々のシグナル伝達物質の活性化をリン酸化部位認識抗体、又はaffinity precipitationを用いて解析した。対照は足場依存性の卵巣癌細胞株とした。【成績】FAKの活性化(仮説1)は浮遊により対照と同様に減少したが、Bcl-2の過剰発現(仮説2)とERKの活性亢進(仮説3)を共に認めたのは本細胞株のみであった。このERKの活性亢進の原因としてRasの活性亢進を認めたが、驚くべきことにその下流のMEKを阻害してもERKの活性化は阻害剤の濃度に関わらずごく一部しか阻害されなかった。そこでMEK阻害剤と共にPI3K阻害剤を加えたところERKの活性化はほぼ完全に阻害された。このPI3KによるERKの活性化は、Ras、MEKの活性亢進が血清非依存性であるのに対し、血清に依存して認められた。【結論】Bcl-2の過剰発現と、ERKの活性亢進という2条件が共に存在することが、足場非依存性増殖能獲得機序の一つであることが示唆された。またERKの活性化機構としてPI3KからMEKを介す事なくERKに至る新たな経路の存在が示唆された。このことは癌転移機構の解明のみならず、シグナル療法を開発していく上でも重要な意義を持つと考えられた。
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