Research Abstract |
アレルギー疾患をかかえる患者が,非常に増えており,アレルギー疾患はもはや現代病の一つに数えられている。とくに,ここ近年,花粉症やアトピー性皮膚炎などにみられるように,アレルギー性疾患は一種の社会問題とさえもいえる状況になっている。中でも金属によるアレルギーは,これまで原因不明とされてきた皮膚科的疾患の診断技術の向上に伴って,最近,特に注目を集めるようになってきている。 金属あるいは金属元素は日常生活で必要不可欠な存在であり,また,ヒトの代謝系の中でも非常に重要な役割を果たしている.しかし,何年も前に修復に使用された金属が、口腔内でイオン化し,タンパクと結合して抗原となり感作されることによって,その後,皮膚や粘膜などにアレルギー性の疾患を引き起こすことがある。これが,いわゆる金属アレルギーである.本研究では,まず、金属アレルギー被疑者に対して、パッチテストによってアレルギーの有無、症状の関連を検討するために臨床における金属アレルギー患者の検査を行った。平成10年4月〜平成15年10月本学歯学部附属病院第二補綴科を金属アレルギーの疑いで受診した患者約120名に対してパッチテスト検査を行った。パッチテストの判定は,国際接触皮膚炎研究班(ICDRG)の判定基準に基づき判定を行い以下の結果を得た。123名の被疑患者のうち,80名(で何らかの金属に対して陽性反応が認められた.特にCr, Ir, Ni, Pdの順で陽性者が多く,従来より多いとされるHg陽性者はそれほど多くなかった.また,多い人では一人で9種の金属に対して陽性反応が認められた.今回の我々の結果は,他の報告とほぼ同様にCr, Ir, Ni, Pdで陽性率が高かったが,HgやSnに対する陽性率は低い陽性率であった.一般的には,Ni, Pt, Auなどによる陽性は,ピアスによる感作が原因と考えられている。Hgに対する陽性は,幼少時のマーキュロクロムの使用やアマルガム充填との関連が指摘されているが他の報告よりも今回の調査で低い値を示した.今回の結果を基に、明確な金属アレルギーであると判断された患者血液を用いて、検査システムを確立していく予定である。
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