2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質による非神経組織障害と神経栄養因子誘導との関連
Project/Area Number |
14657597
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
出川 雅邦 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50134002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 清光 静岡県立大学, 薬学部, 助手 (90189366)
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Keywords | 神経栄養因子 / 環境化学物質 / カドミウム / 精巣 / 遺伝子発現 / 非神経組織 |
Research Abstract |
NGF、BDNF、NT-3を代表とする神経栄養因子は、神経組織のみならず非神経組織の分化・増殖にも重要な役割を果たしていることが最近明らかにされ、環境化学物質による非神経組織での毒性発現への関与が期待される。本研究では、この可能性を追究することを目的とし、まず本年度は、精巣に強い毒性を示す塩化カドミウム(Cd)をラット・マウスに投与し、神経栄養因子とそれら受容体の発現変動を検討することでCd毒性発現に対する神経栄養因子の関与の可能性を評価した。 7週齢雄性SDラットおよびddyマウスにCdを単回皮下投与(20μg/kg体重)後、経時的(0〜96時間)に精巣を摘出し、その臓器重量の測定を行うとともに、それら精巣よりRNAを抽出し、神経栄養因子(NGF、BDNF、NT-3)と受容体(LANR、TrkA、TrkB、TrkC)の遺伝子発現をRT-PCR法により検討した。 ラット、マウスともにCd投与96時間後に精巣重量の減少が見られた。RNAの発現変動に関しては、両動物種ともに、NGF、BDNFは、投与48〜96時間後に発現量の増加が認められ、NT-3は、ラットで発現低下が、マウスでは逆に発現上昇が96時間後に見られた。受容体に関しては、ラットではTrkAを除く受容体の発現が96時間後に有意に低下し、マウスではすべての受容体遺伝子の発現がラットより早期に低下した。 以上、Cd投与精巣で種々神経栄養因子や受容体遺伝子の発現変動が見られ、Cdの精巣に対する毒性に神経栄養因子が関わる可能性が示唆された。次年度は、Cdによる精巣傷害の病理像と各種神経栄養因子と受容体の局在性を比較し、さらにCaの精巣障害発現への神経栄養因子の関わりを追究するとともに、非神経系組織へ障害を示す種々環境化学物質での検討を行い、環境化学物質による非神経組織障害への神経栄養因子の関わりを精査する予定である。
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