Research Abstract |
本初究は,私たちの身の回りで多用されているプラスチックスを,安全でしかも,自然界で持続的に生産/再生可能なグリーンポリマー(=生分解性プラスチック)に置き換えることを目指して,自動車内装材や玩具への利用可能性を検討した.素材としては現在唯一量産が可能なポリ乳酸(poly-L-lactic acid : PLLA)に着目した.H14年度はPLLAの欠点となる耐熱性・耐衝撃性を,玩具や自動車内装部に利用可能なレベルまで向上させるため,初期結晶化過程についてX線回折測定および熱分析によって解析し,加熱成型・熱処理条件の変化によって生じる微細構造と物性の関係を検討した.核剤の添加によって結晶核の達成が促進され,その後の熱処理により結晶密度が増加し,加重たわみ温度において実用化に耐えうる耐熱性が得られた.結晶密度の増加はポリ乳酸の耐衝撃性の低下を引き起こすので,加減が必要だが,他の生分解性プラスチック(ポリブチレンサクシネート)の添加によっても耐衝撃性の改善が可能であった.15年度は特に玩具として使用された場合の、熱・光・湿度に対する安定性と,保育の現場で視覚的・感性的に受け入れられるかについて検討した.安定性については,添加物を一切含まないPLLAを数種の条件で成型し,紫外線照射,環境試験器,屋外暴露による変化を,密度測定,赤外吸収スペクトル,示差走査熱量分析,原子間力顕微鏡観察,引っ張り試験によって検討した結界,通常の使用では外観・内部構造ともに変化なく安定であることが解った.しかし,浴室内(40℃,90%RH)で90日以上放置すると,徐々に結晶化が進行する.また,波長254nmの紫外線(殺菌灯)では1時間の照射で極端な劣化が認められたので,これは廃棄時の処分に有効といえる.保育現場では,アンケート調査から保育者はおもちゃの安全性とその素材に関する意識が高く,従来の素材に対するこだわりは薄いことが判り,使用状況の観察結果から,素材は遊びを左右する特徴があり,プラスチックの場合はその透明性を活かした遊びへの認められた.
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