2002 Fiscal Year Annual Research Report
光トポグラフィによる言語処理メカニズムの直接的解明の可能性
Project/Area Number |
14658052
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木下 徹 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 教授 (90177890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 智宏 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助手 (40293716)
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Keywords | 光トポグラフィー / 神経言語学 / 脳科学 / 英語教育学 / 自動化 / 選択的注意 / リスニング / リーディング |
Research Abstract |
実験1 光トポグラフィの可能性探究 本実験では、英語学習者の脳内メカニズムを解明することにおいて、脳機能画像装置である光トポグラフィの可能性を模索した。リスニングとリーディングにおける脳内の活性部位と活性状態を血流量により観測し、ブロードマンの脳図を参照して言語処理に関わる部位を推定した。そして、光トポグラフィをPETやfMRIと比較しながら、言語理解メカニズム解明における有効性を主張した。血流量と言語処理の関係においては、Posner(1995)等で、脳血流が増加するのは被験者が課題に対して意識的に注意を向ける時であることをPETで実証していることから、脳血流量を測定すれば選択的注意の働きが捉えられるという立場を取った。尚、こうした脳科学の面からの言語処理過程における実証データを得ることで、これまで認知理論留まっていた言語処理モデルを検討する可能性を示唆した。 実験2 光トポグラフィによる英語学習者の脳内活性状態の観測 本実験では、脳血流量増加が注意の意識的高揚であるという立場をとり、日本人英語学習者の課題遂行中の選択的注意がどのような効果があるのかを脳科学的に明らかにした。英語学習者の上級者と初級者を被験者とし、聴解と読解の課題遂行中の脳内の血流状態と学習成績とを、学習が進むにつれて、無意識化(=自動化)を含む適切な選択的注意を働かせられるようになるという仮説により総合的に考察した。 実験結果と考察 課題遂行時に、初級学習者は、脳内全体に血流の増加がみられ、一方、上級学習者は、脳内の言語中枢のみに血流の増加がみられたことから、上級学習者は選択的に言語中枢を活性化させていることが示唆された。尚、血流量を比較してみると上級学習者になるにつれ減少していることから、学習が進むにつれて選択的注意は、意識的から無意識的に働くようになる。さらに、言語処理がコントロール処理から自動的処理に移行ししていくとの知見が得られた。
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