Research Abstract |
「音楽と絵画を結びつける新教材の開発」ならびに「基礎理論の整備」の2つを目的とする,本研究において,本年度,<音楽感想画>を論考し,そのベースメントとなるところの,音楽と絵画という異種表現領域に共通な,また,類似せる諸特質を明らかにした。 1)基礎理論に関すること 音楽と絵画とが拠って立っところの,耳(聴覚)と目(視覚)という根本的な感覚器官が示す知覚的な性質を検討する上で,ゲシュタルト心理学を,中でも<近接,連続,類同>という3つの代表的なゲシュタルト法則を参照し,両感覚を比べた。その結果,音も点もその現れる間隔また距離が短ければ凝集を示して1つにまとまろうとすることが確かめられた。さらにこの性質が基盤となり,音も点も滑らかに繋がっていく傾向を示し,一方では旋律に他方では線に発展することが確かめられた。また,音楽だと音色・ピッチなどの水準,絵画だと色・サイズ・形などの水準において凝集が確かめられた。他に,学生たちを対象としたリサーチを踏まえ,音楽と絵画を結びつけうる共感覚的な現象の1つである,<色聴>について考え,音を聴き色が感じられたり見えたりすることの可能性を示した。 2)音楽と絵画を結びつける新教材に関すること 音楽と美術とをリンクする授業実践(主に図画工作・美術サイド)の整理を図り,<音楽感想画,音の地図(サウンド・マップ),図形楽譜,音具(模擬楽器),音響彫刻,サウンド・インスタレーション,マルチメディア,パフォーマンス>の8項目をまとめることができた。その中で重点的に考察したものが,音楽感想画である。上述した基礎理論を視点として,佐々木薫教諭が東京学芸大学附属世田谷小と同附属小金井中とで試みた音楽感想画の授業を検証し,音楽を媒介とすることで豊かなイメージが紡がれて美しい絵を生み,児童・生徒の想像力と表現意欲とを高め,内に潜む創造性を活性化しうることを明らかにした。
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