2003 Fiscal Year Annual Research Report
子供の発達過程解明のための計算科学的方法による描画解析
Project/Area Number |
14658095
|
Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
鈴木 忠 白百合女子大学, 文学部, 助教授 (40235966)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 清之 白百合女子大学, 文学部, 教授 (40129896)
|
Keywords | 子供の発達 / 描画 / ベクトル画像処理 / 縦断的変化 / 巧緻性 / 躍動感 |
Research Abstract |
コンピューターの使用を前提としたベクトル画像処理手法や色彩の固有値を用いて、子どもらしさの客観的尺度化の可能性を検討した。子どもの絵の子どもらしさの抽出は、データ評定者の主観が内在する。この主観的要素を客観化するために数学的手法を用いる。すなわち絵の形態的特徴である非対称性・線の揺れは、発散ベクトルと回転ベクトルの方向と強さの分布で抽出する。複数の子どもの描画に対して本手法を応用し、幼児期3年間の時系列上で、子どもの絵の特徴である「巧緻性」「躍動感」と、絵に内在する形態的特徴の相関変化を明らかにすることを目指した。都内の幼稚園に3年間にわたって定期的にはいり、園児に人物画を描いてもらった。3歳から5歳にかけての3年間、50名ほどの園児から縦断的に絵を集め、その中から37名のものを選んだ。幼児期3年間に描いた絵4枚をランダムな順序に並べて質問用紙をつくり、女子大学生に評定してもらった。それを統計的に分析した結果、「巧緻性」が年齢とともに上昇し、質問紙とは独立に評定したグッドイナフ人物尺度と正確な一致を得た。このことから、絵を上手に描けるということは、知的成熟と一致することが示唆された。一方「躍動感」は、4回のうち、中ほど(4歳児)で高い傾向がみられたが、5〜6歳児では、絵はうまくなるものの、躍動感において停滞する傾向がみられた。つまり巧緻性と躍動感の発達とは、互いにかなり独立した変化の道筋をたどることが示唆された。次に、そのような絵全体の印象が、分析的・形態的特徴とどのように関係しているかを統計的に分析したが、まだ明確な結果を得ていない。そこで上記のベクトル画像処理の手法によって線を中心に分析を試みた。現段階では十分な結論は得られていないが、主観的に感じる、3歳児の「ぶらぶら散歩するような線」と5〜6歳児の「目的に向かってスムーズに、機械的に引かれた線」の区別はできそうである。次年度は、さらにベクトルを用いた分析を進める予定である。
|