2002 Fiscal Year Annual Research Report
不均質で動的な実社会での病原体伝播シミュレーションとバイオテロリズム政策への応用
Project/Area Number |
14658116
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
中村 彰 秋田大学, 医学部, 教授 (20155815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中込 とよ子 秋田大学, 医学部, 助手 (40155693)
中込 治 秋田大学, 医学部, 教授 (70143047)
片平 昌幸 秋田大学, 医学部, 助教授 (90250860)
渡辺 倫子 秋田大学, 医学部, 助手 (00273699)
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Keywords | 麻疹 / 計算機シミュレーション / Monte Carlo法 / 疫学 / 疫病伝播模型 / 動的集団 / バイオテロリズム政策 |
Research Abstract |
病原体として麻疹ウイルス(感染症法:第4群)を採用した。麻疹に関する疫学的調査は比較的広範囲の資料や情報があるが,以下の諸点に関する未解決の課題に対する知見を得ることを目的とした。 1)感染は人と人との接触により実現するが,その接触の様式に関する知見 2)ワクチン接種者と麻疹罹患者との免疫獲得(抗体価)の程度の差異に関する知見 3)1年を超える周期的な発生の機構・機序 4)地域的な発生と全国的な発生の機構・機序 5)防疫的な立場からの効果的な対策への反映 研究初年度においては,Monte Carlo法に従う模擬実験の基本的Algorithmの妥当性を確認し,毎日5名の新生児が対象集団に加わる「動的な集団0〜7歳未満人口12755人)」における麻疹伝播の様子の模擬実験を行った。その結果,以下の知見が得られた。 1)免疫獲得者数が70%程度までの集団では,未感染者の感染(蔓延)は早く進行する。 2)75%以上の免疫獲得者の集団では,感染を免れる者の割合が70%以下の集団よりも大きい。 3)免疫獲得者数の割合が80%までの集団では,その割合が多ければ多いほど麻疹のウイルスの死滅(完全な流行の終息)までの期間が増加する。 4)免疫獲得者数の割合が85%を越えると,一見相反する2つの現象が観察される。 ・流行が終息する結果では,麻疹ウイルスの死滅までの期間が短くなる。 ・流行が終息せず恒常的に起こる場合,1年以上の間隔をおいた大流行が繰り返される。この傾向は,免疫獲得者数の割合が90%では85%よりも顕著である。 5)長期(数年)に亘る麻疹ウイルスの生存,あるいは,実験周期の期間内に死滅が起こらなかった実験(85%以上の初期免疫者)では,「未感染者」が高年齢の相に深く浸透する。 6)麻疹ウイルスが生存を続ける「培床」の可能性として,新生児から1歳までの集団が深く関わっている。 上記の「動的な集団」に関する知見は,従来の決定論的手法(微分方程式)や確率論的手法(Stochastic Process)では再現できないものであり,本研究の手法の斬新さと有効性を示すものである。次年度(最終年度)では,「不均質な集団」について詳細な知見を得ることを目的とする。
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