2002 Fiscal Year Annual Research Report
社会的合意形成におけるメタ決定問題が交渉ゲームに及ぼす影響に関する実証研究
Project/Area Number |
14658117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 昌英 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50332573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湊 隆幸 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (70271591)
小澤 一雅 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (80194546)
野城 智也 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30239743)
佐藤 仁 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (50313010)
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Keywords | 社会的意思 / メタ決定 / 価値多元主義 / 社会基盤マネジメント |
Research Abstract |
本研究はメタ決定の問題,すなわち「決め方の決め方」をめぐる問題が公共政策等の社会的意思決定プロセスに与える影響を実証的に明らかにすることを目的としている.本年度の前半では,メタ決定問題に関する既往の文献を調査した.メタ決定という概念はこれまでも社会哲学,意思決定論,マネジメント研究などの分野で度々研究の対象となってきたが,それが決定そのものにどのような影響を及ぼすかに関する研究は未だ行われていない.とりわけ高次のメタ決定問題,すなわち「決め方の決め方」自体をいかにして決定するかという問題については,論理実証主義にもとづく社会哲学の分野で若干の議論がなされているものの,実証的な研究は未だ存在しない. 本研究は反合意主義的(anti-consensualistic)な政治的多元主義に依拠しつつ,「良い制度」や「良い社会的状態」に関する普遍的な合意が得られなくても決定規範が論理的一貫性を保ち得るような条件を模索した.ハバーマスらが展開するコミュニケーション的合意主義では,社会的意志決定において多元的な見解が存在する状態を合意に至る未決点と捉えるのに対し、本研究ではこの多元性を保つこと自体が一つの決定規範となりうるという立場を提案した.これによって,メタ決定が直面する収束不可能性,すなわち「決め方の決め方」に関する合意はいかに高次のメタ決定問題まで遡ろうとも存在しない可能性がある,という性質をより積極的に捉えることができる. 本年度の後半においては,現在我が国における主要関心事である公共事業の決定に関し,実際の政策論議がいかなる構造をしているかを明らかにするべく実証分析を行った.この結果,メタ決定問題の分析においては事実認識を巡る言説と価値規範を巡る言説を分類することによって,議論の特徴が可視化できることを示した.来年度はこれらの事例をもとに,メタ決定問題が原因で意志決定プロセスが停滞している事例に対し,本研究で提案されたモデルがいかなる実践的知見を与えることができるかを調査する予定である.
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