2003 Fiscal Year Annual Research Report
土壌呼吸量測定法の確立による純一次生産量データから生態系生産量データへの変換
Project/Area Number |
14658154
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
福嶌 義宏 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (00026402)
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Keywords | 土壌呼吸 / 土壌の鉛直構造 / 土壌空隙中のCO2濃度 / 分子拡散方程式 |
Research Abstract |
土壌からの二酸化炭素ガス放出は狭義の土壌呼吸と樹木の根呼吸から成る。その分離方法の確立は本研究の目標であるが不撹乱で両方を分離して連続的に観測することは今なお難しい。本年は土壌断面の鉛直的なCO2生成濃度から、根呼吸量も含めた広義の土壌呼吸量の発生源を考察するために、分子拡散方程式の解析解からCO2生成量の鉛直分布を試算し、それを観測値と比較した。観測は1998年の3月から12月にかけて、名古屋大学構内の二次林内で行われた。土壌呼吸量は地温と正の相関を示し、既存の研究で報告されているように地温の指数関数として表すことができた。ここで、温度が10℃上昇することによってどの程度土壌呼吸量が増加するかを表すパラメータとして定義されるQ_<10>値は2.55を示した。この値は、既存の研究で報告されている値とほぼ同じくらいといえる。土壌空隙中CO_2濃度も、その値は、測定点のすべてにおいて土壌呼吸のQ_<10>値よりも若干低い値を示した。 すべての観測日において、解析解は鉛直分布を良好に再現した。こうして推定されたCO_2生成強度の鉛直分布については、土壌表面から深さ40cmまでの浅い層とそれよりも深い層の2つに区別して比較を行った。このように区分される浅い層(0-40cm)とは有機物が豊富な土壌層であり、深い層(40cm-)とは有機物をあまり含まない土壌層である。推定されたCO_2生成強度の特徴は、浅い層(0-40cm)ではCO_2生成強度は地温に対し高い正の相関を示し、夏期に大きく冬期に小さかった。この変動の幅は比較的大きく、土壌呼吸量が地温に対する感度よりも大きかった。これに対し、深い層(40cm-)ではCO_2生成強度は地温と正の相関は見られたが、浅い層(0-40cm)に比べると変動の幅はかなり小さかった。本研究による土壌中CO_2生成強度の推定から、森林土壌中では、深さによってCO_2生成強度の大きさが異なり、また温度依存性も異なることが明らかになった。
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[Publications] Takahashi, A., T.Hiyama, H.Takahashi, Y.Fukushima: "Analytical estimation of the vertical distribution of CO2 production within soil : application to a Japanese temperate forest"Proc.Int'l Workshop on Flux Observation and Research in Asia. 182-183 (2003)