2002 Fiscal Year Annual Research Report
中性化水素原子のエネルギー付与分布の研究-陽子線治療と中性子生物影響研究の基礎-
Project/Area Number |
14658163
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
遠藤 暁 広島大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90243609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 正治 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (50099090)
静間 清 広島大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10127657)
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Keywords | Track Structure / 中性化 / トラック端 / 陽子線コード |
Research Abstract |
陽子線のトラック端では、陽子線は媒質から電子を捕獲し中性化し水素原子へと変わる。現状においてトラック端での線量は低いと考えられ、この効果は無視されている。例えば、トラック端で粒子線のW値は、電荷交反応などの影饗で、低エネルギーで急激に大きくなる。W値は、測定された電離箱などの電離量の測定から線量に直す際に必要な量であり電離量に乗じるため、線量は3-4倍になり、補正が必要である。しかしながら、陽子のトラック端の現象はよく知られておらず、反跳粒子が生体物質中において電子捕獲で中性の原子核に変わる効果はこれまで考慮されてこなかった。トラック端で主となる中性水素原子がどのように生体内でエネルギーを付与して行くかは線量評価、生物効果の評価に重要である。陽子線治療、中性子線の生物影響研究の基礎として、陽子線のトラック端での陽子線中性化現象がどのように線量に寄与するかを正しく理解することが本研究の目的である。 本研究年度においては、まず測定器内部での電化交換反応を模擬計算するために、Si中における電子線のトラックストラクチャーコードの作成を行った。Si中の電離断面積、励起断面積は、必ずしも必要な低エネルギー(数eV)までのデータはないため、この断面積の評価を行った。断面積作製には、励起断面積はGanas等の一般化調和振動子法を用いた計算法を参考に作製した。電離断面積については、Gryzinskyの半古典近似を用いた。作製した断面積の評価を行うため、エネルギー阻止能の計算を行った。エネルギー阻止能の実験値、評価値は数keV領域までしか存在しないが、これらのデータと比較すると、今回作製した断面積を用いることで、データが存在する領域において、再現できることが確認された。本研究によって、イオン化エネルギーの最小値8eVまでの電離、励起過程のエネルギー損失関数を成分に分けて決定することがでる。この結果は、日本放射線影響学会において発表した。 今後の予定としては、本コードのベンチマークを行い電子部分の完成すること。また更に、陽子線に対する断面積の作成と評価を行い、陽子線のトラックコードのコーディングに取り掛かることである。
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