2002 Fiscal Year Annual Research Report
電子相関が強い系の多重極限環境下における物性発現メカニズムの分光研究
Project/Area Number |
14702011
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
木村 真一 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (10252800)
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Keywords | 強相関伝導系 / 赤外分光 / 多重極限 / 電子状態 / ラマン散乱 / 光電子分光 |
Research Abstract |
物質中で展開されるさまざまな物性の出現のメカニズムを調べるために,圧力や磁場などの外部摂動を加えた状態での電子状態の知見が得られる高磁場・高圧下の赤外分光・ラマン散乱と,そこで得られた結果を理解するうえで基本となる高分解能角度分解光電子分光を開始した。光源は,分子科学研究所UVSORやSPring-8からの高輝度シンクロトロン放射光である。赤外分光用ビームラインでは,高磁場下の顕微赤外分光を行っており,本年度は測定精度の向上に取り組んだ。また,高圧セルを取り付けて,低温・高磁場・高圧の多重極限環境下での分光研究も開始したところである。 高分解能角度分解光電子分光では,分子科学研究所UVSORからの極端紫外光を使って入射光エネルギーを可変にすることにより,原子を特定した分光のために装置の立ち上げを進めている。 本年度に得られた成果としては,擬二次元有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Brの量子臨界点をはさんだ電子状態の変化である。この物質は,BEDT-TTFの水素基を重水素に置換することで,基底状態が超伝導から反強磁性絶縁体に変化する。その変化は,物性の起源であるフェルミ準位上の電子状態ばかりでなく,フェルミ準位から0.3eV離れた状態にまで及んでおり,BEDT-TTF二量体内の電子のモット転移という解釈で説明できることがわかった。 次年度は,さらに高圧下でおこる反強磁性絶縁体から超伝導への変化に伴う電子状態の変化を調べ,基底状態の統一的な描像を導き出したい。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] S.Kimura他6名: "Optical and Magneto-Optical Studies on Electronic Structure of CeSb in the Magnetically Ordered States"Journal of the Physical Society of Japan. 71. 2200-2207 (2002)
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[Publications] S.Kimura他5名: "Charge Ordering Effect of Electronic Structure of Yb_4(As_<1-x>Sb_x)_3"Journal of the Physical Society of Japan. 71(Suppl.). 300-302 (2002)
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[Publications] J.Sichelschmidt, S.Kimura他5名: "Optical reflectivity of the clathrate compound Ba_6Ge_<25>"Acta Physica Polonica B. 34. 613-616 (2003)