Research Abstract |
本研究では,38億年前のグリーンランドIsuaの縞状鉄鉱層(BIF),35億前の西オーストラリアのBIF,チャート(chert)など,38億年前から25億年前にわたる,世界各地のBIF,chertのレニウム(Re),オスミウム(Os)同位体比を分析することによって,未だよくわかっていないArcheanの大陸地殻がいつ頃,どのように誕生し,その後どのように進化してきたかについて情報を得ることを目的とする。オーストラリアPilbaraの34.6億年のMarble Barのチャートは34.5±8.8億年のRe-Osアイソクロンを形成し,その初生^<187>Os/^<188>Os同位体比は0.93という非常に高い値を示すことが明らかになった。一方,38億年前のIsuaのBIF,チャートも同様に高い初生Os同位体比を示した。ここで,初生Os同位体比は,その岩石の生成時の同位体比を示す。大陸地殻は高い値を示し(現在の平均で1.0-1.4),逆にマントルは低い値を示す(現在の上部マントルで0.12-0.13)。また,太古代チャート,BIFから得られたデータによって地球初期大陸進化をより詳細に明らかにするために,それらの試料と同様な海洋堆積物であるアンバーを分析し,顕生代のOs同位体比の変動と堆積環境との関係を調べた。日本の付加体に産するアンバーは海水の化学組成を反映し,また顕生代全体にわたって,試料の入手が可能である点で有利である。これを元に顕生代の海水のOs同位体比変動をほぼ復元し,海水のOs同位体比は大陸およびマントルからの供給のバランスに鋭敏に反応することが明らかになった。すなわち,Pilbara,Isuaのチャート,BIFで得られた高いOs同位体比は,それぞれ,35億年,38億年前にすでに,海洋に大陸地殻由来物質がそれほど少なくない量の寄与があったことを示す。
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