2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14703007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 和之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20282022)
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Keywords | ポルフィリン / フタロシアニン / 励起多重項状態 / ニトロキシドラジカル / 時間分解ESR / 一重項酸素 / 光磁性 / 光線力学的治療 |
Research Abstract |
本研究では、常磁性種と励起三重項色素間相互作用から形成される光励起多重項状態を利用すること下、スピン選択的な光物理過程、エネルギー移動、化学反応を制御することを目的とする。 昨年度の研究では、励起三重項ケイ素フタロシアニン(SiPc)から三重項酸素へのエネルギー移動により生じる一重項酸素の生成機構に対して、常磁性ニトロキシドラジカル(NR)の効果を検討し、光増感剤に1つのNRが結合することで50%、2つのNRが結合することで100%、一重項酸素生成効率を上昇することに成功した(SiPcのみとの対比)。 ポルフィリン化合物から生成する一重項酸素は、癌の光線力学的治療へ応用されており重要である。そこで本年度は、常磁性ラジカルとの相互作用から形成される光励起多重項状態を利用することで、生体への毒性が高い重原子を用いずに、光線力学的効果を高める方法を検討した。TEMPOラジカル結合型SiPcのヒト子宮頸癌由来細胞HeLaに対する光毒性を検討し、(1)5μM以下では、TEMPO結合型SiPcは毒性を示さないこと、(2)TEMPOと結合することでSiPcの光毒性が著しく上昇すること等を実験的に解明した。EPR、電子吸収スペクトル測定により、(1)細胞中においてもTEMPOは不対電子スピンを有すること、(2)軸配位子TEMPOがSiPcの会合を妨ぐこと等がそれぞれ明らかとなっており、軸配位子TEMPOの電子スピン効果、立体効果双方により、光線力学的効果が上昇することが解った。 一般に、常磁性種との相互作用は、励起状態の短寿命化を促進し、光反応量子収率を下げるのみと考えられている。本研究成果は、これらの常識を覆し、TEMPOラジカルとの相互作用から形成される光励起多重項状態を利用することで、細胞への光毒性を上昇できた初めての例であり、新規光増感剤創製への指針を得た。
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[Publications] Katsunori Nakai: "Theoretical Calculations of the Electronic Absorption Spectra of Oxotitanium(IV) Phthalocyanine in the Solid State"The Journal of Physical Chemistry B. 107. 9749-9755 (2003)
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[Publications] Takamichi Uchiyama: "A Phthalocyanine-Dendrimer Capable of Forming Spherical Micelles"Chemitry A European Journal. 5757-5761 (2003)
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[Publications] Kazuyuki Ishii: "A Concept for Controlling Singlet Oxygen (^1Δ_g) Yields Using Nitroxide Radicals: Phthalocyaninatosilicon Covalenfly Linked to Nitroxide Radicals"Journal of The American Chemical Society. 126. 2082-2088 (2004)
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[Publications] Shun-ichi Hoshino: "Spin-selective triplet energy transfer from C_<60> to 1,3,5-phenylene-based dendritic metal-free porphyrin"Chemical Physics Letters. 386. 149-152 (2004)
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[Publications] Shoji Takeuchi: "Time-Resolved EPR and Transient Absorption Studies on Phthalocyaninatosilicon Covalently Linked to Two PROXYL Radicals"The Journal of Physical Chemistry A. (In Press). (2004)
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[Publications] 石井 和之: "機能性色素としてのフタロシアニン(坂本恵一、廣橋亮、大野映子編)"アイピーシー(In Press). (2004)