2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14703007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 和之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20282022)
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Keywords | ポルフィリン / フタロシアニン / 励起多重項状態 / ニトロキシドラジカル / 時間分解ESR / 一重項酸素 / 光磁性 / 光線力学的治療 |
Research Abstract |
本研究では、常磁性種と励起三重項色素間相互作用から形成される光励起多重項状態を利用することで、スピン選択的な光物理過程、エネルギー移動、化学反応を制御することを目的とする。 昨年度までの研究から、(1)常磁性ラジカルとの相互作用から形成される光励起多重項状態を利用すれば、生体への毒性が高い重原子を用いずに、ラジカルスピンで一重項酸素量子収率を制御できること、(2)TEMPOラジカル結合型ケイ素フタロシアニン(SiPc)のヒト子宮頸癌由来細胞HeLaに対する光毒性を検討し、軸配位子TEMPOラジカルは、電子スピン効果、立体効果双方により、光線力学的効果を上昇できること等が明らかとなった。 このラジカル結合型SiPcを腫瘍部位においてのみ生成できれば、腫瘍部位選択的な治療が期待できる。しかし一般に、ホモ開裂によるラジカル生成には、生体組織を透過しない紫外光が必要である。そこで本年度は、生体組織透過性の高い近赤外光により、ラジカル生成する色素の創製を行なった。その結果、近赤外光でプロピルラジカル、TEMPOラジカルを生成するSiPc、ケイ素ナフタロシアニン(SiNc)色素の開発に成功した。SiPc、SiNc色素の分子軌道計算は、Si-C、Si-O結合間のσ軌道がフロンティア軌道に存在するため、低エネルギーの近赤外光でもラジカル生成できることを示した。また、光線力学的治療への利用を目指し、SiNcとSiPcがTEMPOで架橋したヘテロ二量体も合成した。 一般に、一重項酸素量子収率の上昇には重原子が必要であるため、光毒性の制御は困難であった。本研究成果より、光励起多重項状態と近赤外光によるラジカル生成を併用することで、腫瘍部位選択的光毒性を示す光増感剤創製への指針を得た。
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Research Products
(5 results)