2004 Fiscal Year Annual Research Report
親水性セルロース繊維ネットワーク表面のフラクタル解析による紙の超撥水化機構の解明
Project/Area Number |
14703030
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北岡 卓也 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (90304766)
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Keywords | セルロース / サイズ分子 / 界面相互作用モデル / 自己組織化 / 多糖分子構造膜 / 表面モルフォロジー / 界面のぬれ性 / サイズ性応答機構 |
Research Abstract |
セルロース繊維ネットワークの親水構造を維持したまま、疎水性サイズ分子によるわずかな表面修飾で発現する紙の超撥水化現象を検討してきた。最終年度は、(1)天然繊維を模倣したセルロース分子構造膜の精密設計、(2)基質の表面モルフォロジーを考慮した界面現象および撥水分子との相互作用状態について詳細に検討し、セルロース繊維材料の撥水性応答を司るメカニズムを究明した。 【天然セルロースの結晶構造の再構築】 天然セルロースはセルロース分子鎖が平行配列したセルロースI型結晶をとる。結晶構造は高分子材料の重要な構造・機能因子であるが、その再構築は熱力学的制約により不可能であった。本研究では、セルロース分子の長軸方向の分子異方性に着目し、セルロースの還元末端にチオール基を選択的に導入後、Au基板上に自己組織化させる新手法により、セルロースI型の結晶構造を有するセルロース膜の調製に初めて成功した。また、その表面凹凸はサブnmオーダーの平滑性を示した。 【サイズ紙モデル界面の設計とぬれ性】 サイズ処理セルロース基質のモデルとして、表面凹凸を制御したセルロース膜上にAuコロイドを分散担持させ、アルカンチオールの自己組織化により両親媒的な界面を設計した。このモデル界面は面積分率で80%以上がもとの親水性セルロース基質であるにもかかわらず、疎水性アルキルの単分子膜と同程度の撥水性を示した。つまり、親水性のセルロース基質を残したまま海島状に疎水成分が点在するだけで、高い撥水効果を発現する紙のサイズ性特有の現象を部分的に再現することに成功した。セルロース繊維の表面モルフォロジーとぬれ性の関係は、他のバルク材料の固体界面と大きく異なっており、この独自の特徴を活かした生物系繊維材料の機能開発に期待が持たれる。
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Research Products
(3 results)