2002 Fiscal Year Annual Research Report
捕食者のいない環境下における草食動物と森林植生の共存機構の解明
Project/Area Number |
14704013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (60285690)
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Keywords | ヤクシカ / 生息密度 / 照葉樹林 / 森林構造 / 食物品目 / 活動時間配分 / 行動域 / 採食圧 |
Research Abstract |
屋久島の照葉樹林内でヤクシカの行動を調査するために、シカを捕獲し、発信機を装着させた。発信機装着個体のうちの数頭について、活動時間配分と採食行動を春・夏・秋・冬に観察した。その結果、春期から秋期の結果から(冬期データは分析中)、彼らは木本落葉、落下した木本の繁殖器官(果実・種子・花)、草本(シダ植物を含む)を主に採食していることが解った。一貫して木本落葉の割合がもっとも多く、全体の約半分を占めた。落葉の樹種選択性もあるようであった。落下した植物の繁殖器官の採食割合が次に高かった。落下した植物器官(木本落葉+落下繁殖器官)の採食割合は全体の5〜9割に達した。なお、落下植物器官はサルが落としたものが少なからず含まれていた。草本の採食割合は季節で大きく変化したが、夏期には3割ほどを占めていた。一方、木本の生葉や実生、樹皮などの採食割合は低かった。この地域のシカは林床に落下した植物器官に食物の大半を依存していることが解った。なお、活動時間配分については分析中である。シカの行動域を調査するため、春・夏・秋・冬に数週間ずつ、6〜8頭の行動域をラジオテレメトリー法によって調査した。結果は現在分析中である。ヤクシカの生息密度を把握するためにルートセンサスを行った。この地域のシカ密度は非常に高いことが示唆されたが、詳細は現在分析中である。また、この地域のニホンザルの生息動態に関するセンサスも行った。調査地において胸高直径5cm以上の樹木について毎木調査を行った。現在までに1000本程度の調査が終了した。現時点における結果からは、調査地域では小径木の割合が多く、また10年前に同じ場所で行った植生データと比較して、樹木のサイズ構成や種構成について大きな違いはなかった。防鹿柵の設置許可について環境省・林野庁・地主と協議を行った。
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[Publications] Agetsuma, N., Sugiura, H., Hill, D.A., Agetsuma-Yanagihara, Y., Tanaka, T.: "Population density and group composition of Japanese sika deer (Cervus nippon yakushimae) in ever-green broad leaved forest of Yakushima, southern Japan"Ecological Research. 18(5)(印刷中). (2003)