2003 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチン-プロテアソーム経路における基質認識の多様性と細胞機能制御
Project/Area Number |
14704064
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川原 裕之 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (70291151)
|
Keywords | プロテアソーム / ユビキチン / Rpn10 |
Research Abstract |
細胞内蛋白質の多くは短寿命であり、その機能は合成と分解の量的調節の上に成立している。近年、細胞機能の制御において、転写・翻訳による蛋白質の生合成調節、あるいはリン酸化・脱リン酸化による翻訳後調節とならんで、蛋白質の代謝的安定性の変化が決定的に重要であるとの認識が定着しつつあり、その制御にはプロテアソーム依存性の蛋白質分解系が大きな役割を演じている。プロテアソームは主としてユビキチン化された標的蛋白質を選択的に認識するATP依存性プロテアーゼであり、総数40種以上のサブユニットから構成された巨大な多成分複合体である。これまでの研究からプロテアソームの一次構造解析がほぼ完了しその複雑な分子構成の全貌が明らかになりつつあるが、この巨大分子複合体の作用機構、特に基質識別の分子機構についてはまだ十分に解明されていない。我々は科学研究費補助金受領中、マウス初期胚で組織特異的な発現パターンを示す初めてのプロテアソーム遺伝子として3種類のユビキチンレセプター(Rpn10c〜e)サブユニットcDNAを単離し、プロテアソームによる基質識別機構には複数の経路が存在することを突きとめた。興味深いことに、Rpn10e蛋白質はマウス胎児の脳特異的に検出され、胚体幹部および成体脳には検出されない。このことは胚脳に特異的なユビキチン依存的蛋白質分解経路が存在していることを示唆している。Rpn10eを細胞内に過剰発現させると、核の倍数化を伴う細胞分裂停止などを誘導し、構成的遺伝子であるRpn10aを発現させた場合とは全く異なる効果を現すことが明らかとなった。これらの結果はユビキチンレセプターサブユニットRpn10aとRpn10eとは異なる機能を有していることを示している。最近、ユビキチン経路による時間、空間特異的な蛋白質分解が細胞増殖や体軸形成、神経分化などの発生現象に密接に関与していることが報告されつつある。我々は、これらのユビキチンレセプターの機能をin vitro結合アッセイやC.elegansを用いた遺伝学的解析などにより解析を進めており、今後プロテアソームによる基質識別のメカニズムを明確にさせるべく研究を展開させたいと考えている。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Sato N.et al.: "Phosphorelay-regulated degradation of the yeast Ssklp response regulator by the ubiquitin-proteasome system"Mol.Cell.Biol.. 23. 6662-6671 (2003)
-
[Publications] Sakata E.et al.: "Parkin binds the Rpn10 subunit of 26S proteasome through its ubiquitin-like domain"EMBO Rep.. 4. 301-306 (2003)
-
[Publications] Kawai et al.: "Regulation of ascidain Rel by its alternative splice variant"Eur.J.Biochem.. 270. 4459-4468 (2003)
-
[Publications] Kinouchi T.et al.: "Mammalian D-aspartyl endopeptidase : a scavenger for noxious racemized protein in aging."Biochem.Biophys.Res.Comm.. 314. 730-736 (2004)
-
[Publications] 佐伯泰, 川原裕之, 横沢英良: "ユビキチンと相互作用するドメイン構造"実験医学. 21. 340-345 (2003)
-
[Publications] 川原裕之, 嶋田益弥: "ポストシークエンスタンパク質実験法 第4巻"東京化学同人. 20 (2003)