2003 Fiscal Year Annual Research Report
メルロ=ポンティの身体論と哲学的人間学および認知心理学との関連
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14710006
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
音喜多 信博 椙山女学園大学, 人間関係学部, 助教授 (60329638)
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Keywords | 哲学的人間学 / 現象学 / メルロ=ポンティ / シェーラー / テイヤール・ド・シャルダン / ゲーレン |
Research Abstract |
今年度の研究実績は大きく分けてふたつある。 1,年度はじめの研究実施計画では、課題として、(1)シェーラーの「哲学的人間学」とメルロ=ポンティの前期思想とのあいだの類似点と相違点の整理、(2)メルロ=ポンティの後期思想とテイヤール・ド・シャルダンの進化論的人間学との関連の解明、をあげていた。この研究の結果、(1)『行動の構造』(1942年)のメルロ=ポンティは、『宇宙における人間の地位』(1928年)におけるシェーラーの『世界開放性」という人間の規定を受け継ぎながらも、「精神」と「生命」の二元論を立てるエネルギー論的コスモロジーに対しては批判的であること、(2)後期のメルロ=ポンティは、「肉」の存在論の形成過程において、『現象としての人間』(1955年)におけるテイヤール・ド・シャルダンの動的な宇宙観に影響を受けながらも、その観念論的・人間中心主義的目的論に対しては批判的であることが明らかになった。この研究の成果は、「メルロ=ポンティと哲学的人間学-コスモロジーの系譜」(日本現象学会第25回研究大会口頭発表)にまとめられた。年度はじめの計画は、おおむね達成されたと言ってよい。 2,ふたつめは、昨年度からの継続課題として、『人間-その本性および世界における位置』(1940年)を中心としたゲーレンの人間学について研究した。その結果、「行為する生物」という人間の規定を鍵概念にして、心身二元論や、行為主体(主観)と世界(客観)の二元論を乗り越えようとするゲーレンの考え方は、メルロ=ポンティの現象学的身体論と近縁性をもつものであることが明らかになった。この研究の成果は、論文「哲学的人間学の基本構想-アルノルト・ゲーレンをめぐって」(『MORALIA』第10号)にまとめられた。
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Research Products
(2 results)