2003 Fiscal Year Annual Research Report
フローベルガーがバッハ等後世の作曲家達に与えた影響力を伝承経路の観点から量る――最近ドレスデンで発見されたフローベルガー作品の写譜を中心に
Project/Area Number |
14710022
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石井 明 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (00317273)
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Keywords | フローベルガー / 鍵盤音楽 / バロック音楽 / ウィーン / ドレスデン / バッハ / 17世紀の音楽 / ベルリン |
Research Abstract |
平成15年度は、この年度の研究の要として、最近発見され、現在ザクセン州立大学・図書館で保存・保管されている、フローベルガーの死後間もなくである1675年にストラスブルグで複写された写本(Dresden, Sachsischen Landesbibliothek Staats-und Universitatsbibliothek, Mus.1-T-595)の検証を行った。また、同図書館には、ウィーンでフックスから古典的な作曲技法を学んだ、ドレスデンの宮廷作曲家であったヤン・ディスマスゼレンカが複写したフローベルガー作品を含む写本も保管されており、これも調査の対象とした。さらには、2003年になって新たにその存在が明らかになった、ドレスデン写本同等、もしくはそれ以上の学術的価値が今後認められていくであろう、フローベルガーの作品21曲を収めた、17世紀後期に複写された写本(Berlin, Staatsbibliothek-Preussischer Kulturbesitz, Archiv der Sing-Akademie zu Berlin, SA4450)の調査も行った。この写本は、現在、所有者であるベルリンジングアカデミーが複製の許可を与えておらず、今後ファクシミリ版の出版が予定されているが、それが刊行するまでは現地において閲覧する以外、その内容を確認することができない。そのため、今回の調査で得られた情報は、とても貴重なものとなった。また、その他の写本についても、マイクロフィルムなどの複製では観察することができない、紙の透かし、製本方法、誤記およびその修正の跡などを、実物を検証することで確認ができた。これらの事柄は、フローベルガー作品を伝えている写本間の関係を考察する上で不可欠なものである。
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